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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

憑依転生したら相手が生きてて何もできません

作者: 草犬尾茶

 

 …………ここは……?

 目を開くと地平線まで何もない緑色の草原が広がっていた。


 確か俺は赤信号を無視して突っ込んできたトラックとぶつかって、思い出したらゾワっとした。ぶつかった左半身がしびれている気がする。

 体を見下ろしてもぐちゃぐちゃになっていたりはしない、着た覚えのない白いバスローブを着ている以外はいつもの体である。


「お疲れ様でした」

「へ?」


 体から視線を戻すと超美少女がいた、足元まで伸びた黒髪、そして男が着るようなスーツを着ている。


「あんたは何者だ?ここはなんだ?」

「女神様とでも、ここは貴方を迎え入れるために作った世界ですので名前はありません。名前、つけます?」

「…………」


 ふむ、これは夢、もしくは最近アニメやらライトノベルで流行ってる転生するアレだな。


「貴方を迎え入れた理由はただ一つです。異世界転生して私の彼氏を寝取りやがったクズ女の世界を引っ掻き回して欲しいのです」

「はい?」

「滅ぼせとは言いません、私は優しいですから。軽〜く致命的に、バレない程度に取り返しのつかない程度に壊してきて欲しいのです」

「…………」


 えぇ……この女神(仮)……なにこの、何?女の恨みって恐ろしいね。満面の笑みで、目も見事に笑ってて、声色も穏やかその物なのに言ってることが怖い。


 長い髪の先端が波打って少し浮かび上がってるのは怒りのオーラってやつだろうか。女神にもなると感情で髪の毛動くもんなんだなぁ……


「ですがクソビッチの世界の人間の胎児の魂を抜いて差し替えるなんて真似はできません。ハッキングは得意じゃないんです」


 こてんと首を傾げて顎に人差し指を持っていった。クソビッチとか言ってなかったら可愛いんだろうがな。


「そこで憑依っていうわけですよ!丁度今さっき死んだ少年もいますし!」

「遠慮しておきます。普通に天国行かせてください」


 漫画だったらにぱーって文字がつきそうなくらいに無邪気な笑顔を浮かべる女神。怖い。


「ですがただ憑依してもらうだけではダメです。世界を壊すための力が要ります。単純に力を与えれればいいんですが不可能です。魂自体の力、あのクソ世界だと魔力とか言いましたかね、それを強化するのと世界の理についての知識。この二つしか与えることができません。ごめんなさいね?」

「天国に……」

「あ、そうでした。壊したりなんかしたらバレちゃいますね。引っ掻き回して普通に生きてもらえれば結構です。嫌がらせですから、ええ」


 話聞いてます?俺の意思は?


 草原が白色に溶け始め、体が沈む。女神は薄く消えていく。


「では行ってらっしゃい。頑張ってくださいね!」

「人の話聞かねえから寝取られんだよぉおおお!」


 言ってやったぜ。









「神父様、フリードは!?」

「大丈夫です。今、儀式が終わります」


 お?なるほど、蘇生される時に魂入れ替えたとかそんな感じか。蘇生の影響で記憶を失ったってことでいけば。


 体の内部、それよりもさらに深い部分に何かが押し込まれる感じがした。


 ……えっ、なに。


「うあ……?」


 勝手に目が開いた。勝手に声が出た。勝手に起き上がろうとしてる。


「フリード!」

「うお!?」


 金髪美少女に抱きつかれたっぽい。ぽいっていうのは抱きつかれた感覚がないのだ、今さっきまで感じていた背中の硬い感触が消えて全身に麻酔をかけられたような……


「蘇生の儀が無事に終わりました。一週間は大事をとって休んでください」

「俺、確か……」

「バカ!なんで奴隷なんかを庇って……!」

「ルゥ……」


 なにこれ。マジでなにこれ。VRでドラマ観てるかのようだ、すごく虚しい。


 ルゥって呼ばれた少女を抱きしめて頭を撫でる。

 なお体が勝手に動く上に感触はない。


「フリード様……」

「フィロ!無事だったか!」


 涙目の銀髪犬耳少女(首輪つき)を見て勝手に叫ぶ。


 えっと、あの、俺は……もしやもう一人の僕みたいな感じで入れ替わったり会話したりするポジション?それって世界引っ掻き回したりできませんよね。


「あんたがいなければフリードは……!」

「ひ、ぅ……」

「ルゥ、落ち着け」


 何この修羅場。何もできないしフリードとやらに任せるとして、この状態で何かできないかやってみようか。










 結論、何もできませんでした。こいつらの家に帰った後にフリードに喋りかけようとしてみたができなかった。

 しかし何かないかと考えていると世界の理について、だと思われる知識があり、それを漁ると魔法の原理、物理法則の内容、全ての生物、存在に対しての知識。神についてやら色々と知ることができた。


 適当に調べただけなので全く理解してない上にほぼ忘れたが、使い心地としてはインターネットに近い。街の名前だとか一般常識、歴史だとか、普通に生きるために必要なことは一切わからない。


 知識与えるならもっと使い勝手いいやつにしてほしいね。知識というよりも知ることができる力って言った方が近いし。


 寝ている最中は体の支配権が俺になるのはわかったが寝ているせいでよたよたとしか動けないし、目も開けない。

 いや、開けるんだけど開いて数秒したらフリードが起きてしまい体の支配が奪われる。


 どうすっかなー……自殺したら支配権奪えないだろうか?

 蘇生されたせいでフリードの魂が戻ったのなら死ねばフリードが消える可能性がある。


 だけど俺まで消えるかもしれない、それにせっかく生き返ったフリードくんを巻き込んで死にたくもない。……これは最終手段だな。


 体の支配権がある間に色々とやってみたが、視覚聴覚が反応するとフリードが起きる可能性がある。触覚は大丈夫。味覚と嗅覚は調べれていない。


 体は動かしづらい上に目を開いてはいけないので動くのはダメだ。しかし魔法は使える。使ってもフリードが起きない。


 幽体離脱、レイス化の魔法だとか。五感を代用できる魔法とか調べてみよう。


 寝ている間の実験はこれで終了だ。








 翌日、フリードが魔力増えていることに気づいた。ステータスを表示するカードを見て8000増えてるとか言ってた。

 表示されてた数字から8000引くと92だ、88倍になったんですか。よかったですね〜


 ……それ俺の魔力だと思うんですよ。

 俺の魔力で女の子に崇められてんじゃねーよ、俺のだよ。

 悪態をついたところで聞こえもしないし意味はないのだが。


 世界の理での検索結果とフリードの魂の大きさとかを考えてみるとフリードの魔力は一般人の半分以下、しかし俺の魔力は調べても調べても果てがないので無限だと予想される。


 ところでフリード、お前はなんでスラム街らしき場所で暴れまわってやがんですか?


「ぐぎゃあ!?」

「ははは!ゴミどもめ!死ね!」


 少女二人も暴れてます。それこそ何のためらいもなく、無秩序に、お前らこそゴミだろと言わんばかりに人を切っては薄暗いスラム街が赤く明るくなるほど火魔法を放ち、家が燃える。


 やべぇよ、ホントやべぇよ。こいつらに任せておけば女神の野望は果たせるのではないかってくらい壊してるよ。


 なんてやつに憑依させてくれてんだ。……いや、目的からして正しい人選なのか?でも俺の精神が崩壊する。

 それかスラム街で殺戮をするのがこの異世界の普通なのか?

 この異世界をノースティリスと名付けよう。


 とりあえず今日あたりフリードとキチガイ少女二人組を巻き込んだ自殺をしてみよう。





「おう!フリードじゃねぇか!騎士に殺されたとか聞いたが?」

「ああ、死んだよ。腹癒せに乞食狩りしてやったぜ」

「いいね、あいつらは居るだけで飯が不味くなるからな」

「「HAHAHAHAHA!」」


 ホントヤバイんですけど、やったぜじゃないよ、何これ。隣の部屋からはあんあん聞こえるよ。これがこの世界の常識何だろうか。


 少女二人はフリードの背後に侍っている。


「体調はどうよ?」

「生き返り直後としては上々、明後日くらいには完全に良くなるはずだ」

「そうかそうか。なら三日後にパーティーがあるが……やるか?」

「いいぜ、やっちまおう」


 パーティーって何。絶対にロクでもない事なのは間違いない。

 それまでに自殺してやろうか?しかし他の悪党どもも殺したい。何か方法はないだろうか……






 さて、なんで俺はVRでAV観せられてるんだろうか。人が考え事してる時にあんあんあんあんと、暗いし嬌声がうるさいし、考え事できないんですが!


 精神しかないせいなのか性欲ないし、ただうるさいだけである。可愛いとか綺麗とかは感じるんだが裸見ても何も感じないのは何故だ。


 悪党どもを皆殺しにする方法だが、寝ている間に殺して回るというのと使い魔などを製作して戦わせるというものを思いついた。

 それをするためには全員が寝静まっていることが条件である。動くにしても使い魔作るにしても少女二人に見られたら止められるし、おかしい事に気付かれるからな。





 ……やっと終わったか。絶倫すぎなんだよな、何回やってんのこいつら。しかも薬使ってたよ、何あれ媚薬?


 ……とりあえず、まずは3人にスリープをかける。その次に隠蔽に隠蔽を重ねた異空間を作成してその中にフリードをテレポート。フリードのいた場所には同じ見た目と体温をした肉塊を生成して置いておく。


 ……怖いのでもう一回フリードにスリープ。保有魔力の半分以下の魔法は無効化されるようなので多分意味はない。無限を半分にしても無限であるわけで。4000以上魔力を込めてやってみたが効いた感じはしない。


 さて、自立使い魔の作成に移行しよう。身体の構成はエルフを真似して作っていく。

 自立する使い魔の作成は第一級禁術となる、製作過程に魂分け与えるってのがあるせいだ。普通の人がやると死ぬ。


 アンデットから魂抽出して自分の魂に継ぎ足す禁忌錬成術があるのでそれの併用が前提らしいが俺の魂はやたら大きい、それどころか無限っぽいので大丈夫だろう。


 遺伝子から細胞、臓器、様々な体液を知識見ながら作り続ける。魔力量で適当にできないのが辛い。だって俺素人よ?初めてプラモデル作る時に説明書ガン見しながらやったのを思い出す。一個作ってやめたけど。





 くぅ〜疲れました!これにて全臓器完成です!あとは筋肉やら血管やら皮膚とか脂肪とか……そろそろ昼だし戻るか。フリードが起きるかどうか心配だったが、体冷やして仮死状態にしておいたから起きることはなかった。


 勝手がわからなくてフリードが死にそうだったが……それはいいだろう。死ななきゃ安いという名ゼリフもあるし。


 時間が停止する液体の詰まった試験管にさっき作った腎臓に似た臓器を入れてテレポート。


 魔力量3億くらいで隠蔽を付け足しておく。あと魔術的な鍵もつけとく。


 フリードの形をした肉塊を消滅させて寝転がる。

 覚醒魔法かけて終了、俺はまた調べ物に移る。










 このくそゴミ共が……人間の子供売った金で酒飲みやがった。

 少女二人はやっちゃいましょう!とかあそこの影に入ったあたりで……と言ってなんの罪悪感も感じさせないまま奴隷商らしき人物に4人の子供を売った。


 恐ろしい世界だ。目の前どころかそれよりも近い所で見て聞いておきながら何もできない自分に虫唾が走る。


 早く使い魔を完成させてこいつらを駆逐しなくてはならない。

 ……いやこいつらを奴隷として売るか。労働力として中世では奴隷が一般的だったはずだ、それがなくなっては色々と面倒が起きるだろう。


 そんなもの魔法でどうとでもなるわけだが、それをしてしまえば労働階級の人々が逆に苦しむ事になる。


 こういった犯罪者を殲滅して食糧事情と衛生環境だけでも整えようか。その程度なら不都合はでないはずだ。












 ……完成した。


 全身に魔法式と呼ばれるものを埋め込み性能を強化した、見た目としてはエルフの美少女だがアダマンタイトを握り潰せるし、軽く走れば亜音速が出る。

 装備に関しても魔力を込めに込めて上位神器と呼べるもので全身を固めた。


 ステータスを見たがフリードの500倍はあり、上位のドラゴンよりは少々弱い程度のステータス。

 魔力については無限だし、神器の性能も考えればこの世界で最強だろう。


 魂を半分に割いてみたが無限のままだった。……やっぱり無限を半分にしても無限だっていうのは、当たり前だよね。


「マスター、命令を」

『明日の昼に西の街道を馬車が通る。その馬車を襲う者共をこいつを残し全員……やはり殺すか。そうしよう。こいつを残し全員殺せ。その後は正しく自由に生きろ。用事があれば連絡する』


 これでもしフリードが死んだ場合に俺もろとも消えたとしてもこいつは大丈夫だ。殺す理由は犯罪者どもを奴隷にしたとして何らかの力が働き解放されてしまう可能性がある。


 あと何人か作って食糧事情から衛生環境だとかを改善させるように働きかけたいがそのためには俺がいなくてはいけない。

 フリードを仮死状態にして傀儡にしてしまおうと思ったがスキルで耐性が付き出した。今はどうでもいいがその内仮死状態にする方法がなくなってしまうだろう。


 実に面倒だ。


『行け』

「…………」

『……どうした?』

「名を、つけてください」


 へ?おおう?そうか、そうだよな。道具だが本当の人として作ったからには名前はいるよな。

 一号、エルフ、白髪、……うーん、まず人の名前って見た目とか特徴からつけないよな。だったら……どうしよ。


「……我が儘を言って、ごめんなさい。……では、ぐすっ」

『待て待て待て待て!今考えてるから!』


 よし、止まった。……うおおお、泣いとる。どないしよ。焦りすぎて口調壊れとるやないか。こほんこほん。

 ……えっと時雨、白萩、アリス、チコ、ああ、もう俺の好み丸出しの顔で泣くなよ。


 泣く?ティア、……いいんじゃね?ちょっと捻ってティアンとか?泣くなって意味でノティア?ティアレスとか?ティアレスは男っぽい気がしなくもない。


 よし。


『お前の名前はノティアだ。だからもう泣くな、な?』

「はい、ましゅた、ひっう……」


 ボロボロに泣いてるんですけど、名前言ったら余計泣きだした感あるよこれ。よしよしと撫でてやりたいがこの犯罪者の体+犯罪者キチガイ少女二人の体液がべちゃべちゃについてるため触りたくない。

 触ったらノティアが穢れる。こんなことなら洗っとけばよかった。起きる前に似たような液体生成すればいいだけだし。


 魔力で手を作って、硬くならないようにしつつノティアの頭を撫でる。


 顔を上げて目を開いた。でもまだ泣いてる。

 おかしいなー、優しくて気丈な(・・・)性格にしたつもりだったんだけどなー。


 可愛いからいいか?でも人殺しなんてできるのか……?


『戦えるか?』

「はい、でも、もう少、ひぅ、待って、くだしゃい。ぐすっ」

『待つから、うん』


 マジで大丈夫かな……何があっても死なない程度には強いんだけど。










 さて、作戦当日、その昼となった。ノティアと連絡を取る手段はないので不安でしかない。


 犯罪者集団は合計44名、手口は魔術的隠蔽を施した操作可能な落とし穴に馬を落として弓矢、石などで一方的に攻撃する。らしい。

 護衛が先行していた場合、落とし穴には落とさず最初に麻痺と睡眠のガスでなんやかんやする。無意味だったら爆破、その後は臨機応変に、とのことだ。


 ってかノティア早く来いよ。今のうちに叩き潰しておいた方がいいと思うんだけど。




 商人の馬車が来た。来ちゃった。


 来る前に終わらせといて欲しかったな、商人の方に被害が出てしまうじゃないか。報酬も名声も要らないから見られる必要なんてないんだよな。現行犯だとかそういった事は異世界なんだし別に構わないと思う。


 ノティアには視認されるだけで敵対者を服従させる力を与えたし、ノティアが犯罪者になったところで誰が何をする事も叶わないのだ。


 俺が後で記憶操作してもいいしね。


「来た!来たよ!フリード!」

「はっ、あいつら笑ってやがるぜ。おまけに護衛は馬車の中と天井だ。チョロいな」

「見ろよ!しかも護衛はペーペーのガキだ!」


 まあ確かに、年端もいかない少年少女しか見えないな。……あれ?


「おいおい!中の女やべー……ぞ……ぁ」

「あ?どした?はー……あ?」

「ふ、フリード、様。に、にげ」


 馬車の中にノティアいるんですけど。


「はぁ?お前らどうしたんだよ、しけたツラしやがって。パーティー前だぞ?」

「ひ、あぁ、ああああ!」


 強面の見た目的に戦闘力が高そうなおじさんが情っけない声をあげ、股に染みを作りながら走って逃げた。若干四つん這い気味であった。


 これは、服従か。距離があるとまずは恐慌効果から起きるんですね。

 ……これマズくないか?犯罪者集団が散ってしまうじゃないか。塵に還る事は許すがただ帰る事は許しがたい。ここで死んでもらわなくては社会のためにならないのに。


 その後二、三名が逃げ、残りの視認した奴らは失禁しながらぶっ倒れた。一応フリードくんは起きている。ビビって声も上げれず腰を抜かしているが気を失ってはいない。だいたい俺のせいだと思う。


 魔法的な恐慌効果を無効化したが、ステータス差から来る威圧感に腰を抜かした感じだろうな。どうせなら気絶して欲しかった。そうなれば俺も動けたというのに。


 そして残ったごく一部の視認していない幸運な犯罪者は倒れた仲間を起こすのに必死だ。これでは犯罪計画が実行されないのではなかろうか。


 ……馬車が止まった。落とし穴に気づいたらしい。


 存外優秀だな、ノティアが止めたわけでもなさそうだし、落とし穴の操作は術師が気絶したため解除されてただの落とし穴となっているが、隠蔽は付与なので残っている。この世界の基準から言ってあの隠蔽はそこそこに高レベルだと思ったのだが……


 馬車の天井にいた人間らしき少年が魔法を使い落とし穴を消滅、道路を修復した。

 そしてこちらの犯罪者集団にも気づいたらしい。

 起きていた犯罪者は仲間を見捨てて逃げようとしたが少女の放った矢に貫かれ悲鳴をあげた。


 フリードは射られていない、ブルブルと震えて座り込んだままだ。


 馬車の方を見ると馬車の天井に少年少女が1組残り、それ以外の護衛3人がこちらに向かってきた。なおノティアも一緒だ。


 フリードは気絶していない。しろよ、おい。


「あんた、ここで何してる?いや、何があった?」


 イケメンの白犬少年がフリードに目線を合わせ威圧的に語りかける。もちろんフリードは「ひっ」やら「あっ」やら声を漏らすだけで受け答えはできていない。


「ちっ、意味がないか」

「見た目的に悪い奴等なのはわかりますし、こんな所にいたんですから殺しませんか?マスターもそれを望んでいます」


 ノティアが殺すって言った。フリード、つまり俺をチラ見してからそんな事を言われると俺を殺すっぽいので若干辛いのですが。

 っていうかさっさと来ても良かったよな、こいつらと一緒に来た意味はあるのだろうか。


「街も近いし……捕まえた方がお得」


 薄幸の美少女、という言葉が相応しいであろう色の薄い小さな女の子がボソッとそう口を開いた。


「まあ特っちゃ特だけどよ、多いぞ?この数連れてくのはなぁ……自爆手段もあるだろうし」


 この異世界のゴロツキは自爆するのか。

 ゴロツキじゃなくて暗殺者が自爆するとかなら小説で見たことあるが、そうでもない奴らが自爆……しかもサラッと思いつく程度にはメジャーな手だということだ。


「では気絶していないこちらの方だけを残して、残りは……」


 ノティアがそれっぽくフリードを保護した。いいね、フリードくんは目が虚ろになっている。


「そうしよう。二人とも、ノティアの案で構わないか?」

「ああ、構わんよ」

「(コクリ)」


 今まで喋ってなかった大人っぽい黒いエルフと薄幸幼女は頷いた。そしてサクサクパッパと気絶している犯罪者集団は処理された。ノティアが蘇生不可能になる魔法をそれらの死体にかけてから消滅させられた。

 物体の消滅魔法は割と一般的であるし、死体となればアンデットやらを殺す浄化で消せるから殺してから消すのはおかしくない。


 俺ことフリードは気絶させられて馬車に乗せられた。元より気絶した状態みたいなものだったがキチガイ少女二人が殺されて消される時は我に帰り、奇妙な叫び声をあげながらノティアに飛びかかっていた。


 おかげで装備に付与されている敵意追放結界に阻まれて吹き飛び挽肉になりかけた。その時に気絶したわけだ。

 ノティアのフォローがもう少し遅かったら死んでいた、視認服従にせよこれにせよ少々弱くした方が良さそうだな……



 こうして犯罪者集団はフリードだけを残してこの世から去った。




チートが強すぎると作品のコンセプトがぶっ壊れかけるという例です。

……うん。書いてみたけど予想した感じと全然違う。


元は犯罪者の少年じゃなく、熱血系の少年でやる事なす事空回りしてあまりにも周りに迷惑をかけるものだから、こいつ殺して入れ替わり直した方がよくね?でもこいつ強いんだけど、全然殺せない。


みたいなのにしたかった。魔法の利便性が高過ぎたね。

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― 新着の感想 ―
[一言] こういうの結構好きです。 続きが読みたいけど、短編で更新していないのが残念です。
[良い点] 草犬尾茶さん、いつもお世話になっています。 読ませていただきました! ノティアが泣いちゃうのが可愛かったです!
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