part2
早速ゴブリンがトロルの号令で私たち目掛けて飛びかかって来ました。1体が飛びかかったら次は2体目、私達はその動きをよく見ながら攻撃を躱していきます。統率の取れた動きに対し、私の方はなかなか魔法を撃つ暇がなく、困っていました。一方、リョーヘイさんは、
「よし、今だ!!」
隙を見つけゴブリンの攻撃を掻い潜り、トロルへとタックルを仕掛けました。当初の作戦通り、トロルの方はなんとかなりそうです。
「トロルの注意は俺が引きつける!その隙にゴブリンはなんとかしてくれ!!」
そうはいってもどうすればいいんですか……?と当時は思いました。
「ウキャー!!」
「ふぇ!?」
トロルとゴブリンを分断することには成功したものの、それは3体のゴブリンの攻撃が全て私に向かうことを示しているのは、既にわかっていました。が、わかっていてもきついです。はじめは攻撃をかわすだけで精一杯でした。
しかし、攻撃をかわすうちに、だんだんゴブリンの動きに統率性が見られないことに気づきました。切れ目がなかったゴブリンの攻撃に間隔が生まれてきたのです。それもそのはず、トロルの奇声による指示がなくなっていました。トロルの方も、リョーヘイさんとの戦いで余裕がなくなってきたのでしょう。不規則になり若干攻撃をかわしづらくなりましたが、杖でゴブリンを殴る余裕もまた生まれてきました。
そうこうしているうちに、ゴブリンの方は、攻撃が当たらず余裕がなくなったのか、ついに、
「ウッキャー!!」
三方から取り囲んだ構図になったタイミングで、私に向かって一斉に飛びかかってきました。
これは当たってしまったら大惨事。大怪我は免れません。しかし、3体のゴブリンが一点に向かって飛んでくるという状況は、裏を返してしまえば、チャンスでもありました。なぜなら、
「えいっ!!」
「グェ!!」
こんな風にタイミングよく飛び上がって交わしてしまえば、ゴブリン達は勝手にぶつかってくれたからです。その隙に、
「スプレッドマジック・ファイア!!」
魔法を叩き込んでしまえば、のびたゴブリンが3体出来上がりました。
「こちらは片付きました!そちらはどうですか?」
リョーヘイさんに声をかけるとともにそちらを振り向くと、ちょうどリョーヘイさんが決め技を放つところでした。
リョーヘイさんは一気に飛び上がり、その剣に聖なる雷を纏わせました。そして、トロルに渾身の一撃を放つべく、降下に合わせその剣を振り下ろしました。その技の名は……
「勇者の一撃!!」
その一撃が止めとなり、トロルは倒れました。
「リョーヘイさん……その力って……」
「ああ、勇者の力、って言われているらしいな。俺が勇者になった覚えは微塵もないんだけどな……」
後半はボソボソと言っていたので、あんまりよく聞こえませんでした。が、その口からははっきりと勇者の力と語られました。
そう、ライラスさんも使っていた、あの力です。
前にヘンリーが言っていた詩はこの時代でも語り継がれていて、その力の存在は私でも知っていました。その力は、世界を救うために用いられるべきものであることも、知っていました。
「だから、その力を手に入れたからには、人々のために、ゼロ・ブラスフェイムと戦うことを決意したんですね」
「ま、そういうことになるかな」
そのように語るリョーヘイさんの目線は、遥か彼方の空に向かっていました。
「……んで、とりあえず目的を果たす第一歩としてどこに向かうんですか?」
「あ、ああ。とりあえずこの地方の中心都市、セントウェスティアに向かって、ギルドで冒険者登録しておこうかな、と思うんだ」
リョーヘイさんはこう答えました。
冒険者ギルド……それは、各大陸の中心都市に置かれ、それぞれの町や個人で起こった困り事を解決するため、冒険者登録を済ませた冒険者を斡旋する機構のことです。そのシステムの汎用性の高さもあり、ここ数年か数十年で様々な場所で急速に浸透していきました。代替システムを考案しようとしていた人もいましたが、冒険者ギルド制度の汎用性の高さに適う人は未だに現れないみたいです。世界各地から依頼が集まるので、しっかりと依頼をこなしていれば食い扶持は稼げる、と言ったところでしょう。
「それに、依頼をこなしていれば、戦闘の実力も上がる。お金も稼げて充実した装備も整えることができる。ゼロ・ブラスフェイム打倒を終着点に据える俺たちにとっては丁度いいと思わないかい?」
「そうですね」
それは私にとっても都合の良いものでした。リョーヘイさんも言った通り、戦闘経験で、多少は荒削りになるかもしれませんが、魔法の精度も高めることができる。また、世界各地に各地に赴くことで見聞を深め、自分が目指したい魔法使いとは何かを模索する手助けになると思いました。
「じゃあ、セントウェスティアに向かいましょう!」
「ああ」
そんなこんなで、私たちは一路セントウェスティアに向かうことにしました。




