part7
次の部屋は、半球状の広場でした。
部屋に入るとすぐに、声が聞こえてきました。
「勇者とその一行よ……よくぞ知恵の試練をくぐり抜けた……」
どうやら先程ので知恵の試練は終わりだったようですね。まあ、珠を全部使ったからそうなのはだいたい察せましたが。でも、ある意味次から本番のようなものです。なぜなら……
「次はそなたらの力を試そう……」
その声と同時に、巨人のような形を取った、虹色のエネルギーの結晶体の様なものが現れました。そう、次は力の試練です。あの巨人は、試練の番人です。
「そなたらの力を結集させ、我を打ち倒してみよ」
その声が終わると同時に、私たちはそれぞれの武器を構えます。それと同時に、番人の色が茶色へと変化しました。
「先手必勝!ハイサンダー!」
ライラスさんは早速雷魔法を番人に撃ち込みます。が、効果は今ひとつ、といった感じで、番人はびくともしていません。そこに、
「ぬぅん!!」
ガンドウさんは槍で突きを喰らわせました。が、その槍は弾かれてしまいました。
「どうやら物理攻撃はあまり入らぬようだな……」
「ガンドウさん、その通りですがハイサンダーもさっき入りませんでしたよ……」
「ならば別の属性を試してみよう!くらえハイウィンド!!」
次にヘンリーが風魔法を番人に放ちました。
なんと、今度は効果があったのか、番人はたじろきました。
「茶色の番人に風魔法が効いた……ということはもしや」
「相手が何か撃つぞ!!気をつけろヘンリー!」
ヘンリーが何やら考察を立てようとしましたが、そんな暇は与えまいと番人は、"岩を腕の付近に漂わせながら"ヘンリーを殴りつけました。が、
「仲間を守るのは俺の仕事だッ!」
槍での攻撃を弾かれたガンドウさんは、その後すぐに立て直し、ぎりぎりの所で番人のパンチを受け止めました。
「危なかったな……」
「ありがとうガンドウさん。だけど、今の攻撃で僕は相手の性質を完全に見切ったよ」
ヘンリーはどうやら何かに気づいたようです。まあ、私もこれまでの流れで流石に気づきましたが。
「やっぱりそうですね。私も多分同じこと考えてます。おそらく、相手の色が、相手の持つ属性、という感じですかね」
「アリアも気づいていたか」
そして、今度は赤色に変化しました。ということは……
「アリア、水属性だ!!」
「はい!!」
私はある魔導書に持ち替え、魔道解放の準備をします。この魔導書はアリアさんの愛用書の一つで、込められているのは海竜の幻獣の力みたいです。よって、この魔導書を媒介として放たれる魔法はもちろんこれです。
「魔道解放!『リヴァイアサン・ストリームα』!!」
私の正面に展開された青色の魔法陣から、竜を模した形の水の塊が放たれ、それは番人に何度も体当たりを繰り返した後、真上に飛び上がり、そのまま番人にダイブし、炸裂しました。番人のよろめき様から、かなりのダメージが入ったものだと思われます。
「よし、このまま押し切れるぞ!」
番人は慌てたように青色に体の色を変化させました。それは番人が水属性を纏ったことを意味しています。だが、それは致命的ではないでしょうか?だって……
「俺の前に雷が弱点ですということを晒すなんて、なかなか度胸があるじゃないか」
ライラスさんは脇に剣を構え、番人に詰め寄りました。その剣には、聖なる雷の力が込められています。はい。ライラスさんお得意の必殺技です。
さあ、ご唱和ください!
「『勇者の一撃』!」
その掛け声とともに、ライラスさんは剣を振り抜きました。強烈な一撃を喰らい、番人は膝をついて倒れました。そして、さーっと、光の粒状になって消えていきました。
どうやら、力の試練も無事突破したようです。
番人を打ち倒した後、またしても声が聞こえてきました。
「力の試練も乗り越えたようだな。さあ、勇者よ。最後に汝の心に問いかけよう」
その声が終わると、広場の中心が開き、そこから祭壇の様なものがせり上がって来ました。その祭壇の上には、女神なのか精霊なのか、何やら神秘的なものが象られた像が置いてあります。
祭壇の動きが止まった後、ライラスさんはその祭壇に登り、像の前に立ちました。私たちは、その後ろでただただ見守っています。
「では勇者に問う。強大な力は時に暴走しやすく、仲間や人々を傷つけることもあろう。その力を、汝は何をもって抑えるか?」
この質問に間違った答えを出すと、これまでの試練達成がなかったことになり、場合によっては咎めによって死に至ることもあるみたいです。その緊張感の中、少し考えを巡らせた後、ライラスさんは答えを出しました。
「それは、愛。仲間を守りたい、誰かを傷つけさせやしない、その為に尽くすという、愛。その愛を以て、俺は力を抑え、いや、力を活かしてみせる!」
その答えに呼応するかの如く、像の真上から神々しい光が照らされ、そして、天の声がまた聞こえてきました。
「その覚悟、しかと聞き届けた。ならば、怒りの力を授けよう。さあ、勇者よ、汝が持つ神器、神剣ルーチェを天にかざすのだ!」
その声に合わせ、ライラスさんはその手に持っている、光を模した剣『神剣ルーチェ』を天にかざしました。それと同時に、その切っ先に向かって雷のような光が流れ込みました。そして、ライラスさんが剣を払うと、光がライラスさんの体を包み込み、そして溶けていきました。
「さあ、その力で、魔を祓うのだ!」
その声が聞こえると、天から差す光は消えていきました。
「これで、新たな力、ゲットですね、ライラスさん」
「ああ、みんなのお陰だ。ありがとう。俺達は出会ってからまだ日は浅いかもしれない。けれど、大切な仲間だ。これからも、助け合っていこう」
うん、と、全員が頷きます。
『俺達は出会ってからまだ日は浅いかもしれない。けれど、大切な仲間だ』
この言葉に聞き覚えがあるんですが、どこででしょうか……そう思っていたら、不意に懐かしい光景が私の頭の中に次々と思い浮かんできました。
それは、アイスドラゴンとの戦いの後、思い出しかけたけど泡のように消えてしまった記憶。
突然記憶が戻ってきたことで惚けていたら、
「おい、アリア。帰るぞ」
「あ、はい」
ライラスさんが呼んでいたので、とりあえず先に帰ることにしました。
記憶の整理は、宿屋に帰ってからやりましょう。
この記憶は、私と未来での仲間達との出会いの記憶。
そして、これは家出して目的もなく仿っていた私を、優しく導いてくれた人、リョーヘイさんとの、出会いの物語……




