4.魔王が仲介します─5
「良いか、バカ共。忘れているようだから言っておくが、虹彩の色が金色なのは魔族特有だ。容姿が様々な魔族だが、それは全てにおいて共通だからこれだけは覚えておけ。」
俺は3人組にそれぞれ視線を向けながら、最低限の知識だけを告げておく。
獣人族犬種ですら、俺が自ら魔王だと言わずとも認識したのだぞ。鬼族がこんなんじゃ、魔族に先はないかもと不安になるだろ。
「ギャンギャンうるさいよ、アンタ達。魔王様がせっかく知識を与えてくれてるんだから、覚えておきなっ。」
それでも口々に喚く3人組に対し、アルフォシーナがハッキリと俺を魔王であると告げた。それにより、一瞬だけ彼等の動きが止まる。
やっぱり気付いていなかったか。まぁ、魔王以外で黒を纏う事が許された唯一の種族だからな、鬼族鴉天狗種は。
大きく溜め息をつく俺に、3人組の視線が集中する。
男に見つめられる趣味はない…って、何度目だこれ。
「ま…さか…?」
「魔王、だと…?!」
「こんなチビが…!」
再び口々に呟く。唖然とした表情のまま、自分達が未だに武器を手にしている事を忘れているようだった。
コイツ等、またチビって言いやがったよ。単に種族的な問題だっての!
「う、嘘に決まってる…!」
「そ、そうだよなっ。こんなヒョロイ奴が魔王だなんて…!」
「黒髪の人族なんて見た事もないが、どうせ変わり種なんだろっ?」
初めは戸惑いつつ、それでも3人組で意見が合うと同時に口調が強くなってくる。
ダメだな、コイツ等。俺の話を全く理解してないや。
「なぁ、アルフォシーナ。この封じ込めアイテム、最悪壊れても良いか?」
「ん。魔王様なら大丈夫。誰も怒らない。」
小声でアルフォシーナに問えば、当然といった内容の返事が返ってきた。
正当防衛がどうより、魔王だからか。─まぁ良いか、それでも。
「なぁ、お前等。もう少し賢くなった方が長生きできるぜ?」
そう告げるや否や、俺は3人組に対して威圧する。
途端、グワリと周囲の空気が変わった。
「ひっ!」
「っ!な、何だっ?」
嘴と鴉人間が息を呑み、羽根男が意識を失ってその場に崩れ落ちる。
魔力封じの中にいるからか、3人組も魔力耐性が低くなっているのかもしれない。それでもすぐ隣にいるアルフォシーナは顔色一つ変わらない為、単に3人組の弱さが露見しただけなのか。
「ま、魔王…だと?」
「まさか…、こんな所に…っ。」
ビリビリとした緊張感の中、喉が詰まったように嘴と鴉人間が口を開いた。
だからさっき、わざわざアルフォシーナが教えてくれてたじゃん。