4.魔王が仲介します─4
「あぁんっ?俺等が弱いって言うのかっ?」
「事実でしょ。あたしの能力値はアンタ達の上をいく。母様も父様も、種族の中で上位の存在だもん。」
嘴が怒鳴り付けるも、アルフォシーナはツンと顎を上げて言い放つ。
「うるさいっ。我等鬼族鴉天狗種に蜥蜴の血を入れやがって!」
「蜥蜴?アンタには父様がトカゲに見えるんだ。大変。治癒士にでも診てもらった方が良いんじゃない?」
「う、うるさいっ。お前にだって、あのグロテスクな鱗がついてるんだろっ?」
それぞれが喚く3人組を相手に、アルフォシーナはいつになく口が回っていた。
俺の前では淡々と喋るのだが、他の次期宰相候補者達の前ではキャンキャンとうるさかった事を思い出す。
「確かめてみる?」
牙を剥く3人組に対し、アルフォシーナが蠱惑的に微笑んだ。
そんな顔も出来るんだと、俺は少し驚く。こう言うのはミカエラの専売特許かと思っていたが。
俺の脳内で、金髪ゴージャスな水商売系のお姉さんが登場した。色気ムンムンなミカエラは、無意味に腰をうねらせているイメージが強い。
「何だよ、見せてくれるのか?」
「…バカだね。見せる訳ないじゃん。」
「何をっ!」
鼻の下を伸ばした羽根男に、冷たく言い放つアルフォシーナ。それにカッとなって武器を振りかぶる鴉人間だ。
だがその武器はアルフォシーナに当たる事はない。何故ならば俊敏な彼女の反撃により、隠し持っていたナイフで二の腕を貫かれていたからである。
その動きが見えなかったのか、嘴と羽根男が慌てて武器を構えた。
力の差が明らかな3人組。それでも引く事をしないのは本当のバカなのだろう。
「お~い、無茶と無謀を履き違えたお前等。この程度の結界で、俺の魔力を完全に封じ込めたつもりか?」
3人組がアルフォシーナと俺を囲む。体格差で周囲から隠れてしまう程。─う…、チビじゃないからなっ。
その表情から、武器を手にした自分達が優位とする考えがありありと見てとれてヘドが出る。だいたい、封じ込めアイテムは所詮集落の祭り安寧用なのだ。
「何おぅ!調子に乗るなよ、人族っ。」
「…ったく、バカだバカだとは思ってたけど。お前等、俺の瞳の色が分からないのか?」
アルフォシーナから受けたナイフを肉体から取り除いた鴉人間が、ギラギラとした目で睨み付けてくる。
だからそもそも、俺は人族じゃないっての。虹彩の色が金色なのは魔族特有なんだ。
「金色だからって何だよっ。」
「…教育の面からして劣っているのか。そんなのに物事を分かれと言うのは酷な事だったな。」
言い返してきた羽根男の言葉に、俺は額に手を当てて目をつむる。
思わず溜め息が出てしまったが、精神的にダメージを受けたのだから仕方がない。
本当に、バカの相手は疲れる。