4.魔王が仲介します─3
アルフォシーナが買ってきた屋台の食べ物を食べ、久し振りの満腹感にまったりとしていた。
「食べないでも特別空腹は感じないんだが、病み付きになりそうだな。」
「ん。食べると幸せになる。」
鬼族鴉天狗種集落の祭りは終わりに向かっているようで、ポツリポツリと人が減って明かりが消えていく。
それらを祭り会場の外からボンヤリと見ていた俺だが、不意に周囲の気配が変わった事に気付いた。
「アルフォシーナ。」
「ん。」
小声で告げると、アルフォシーナの方も違和感を感じ取ったようである。然り気無く周囲に視線を送り、警戒しているようだった。
それにしてもこの感覚、覚えがある。
「魔王様。魔力が封じられた。」
アルフォシーナがハッキリと告げた。
同時に、背後から下卑た笑い声が近付いてくる。
「魔法が使えなけりゃ、ただのちっこいガキ二人。」
「俺等の方が体格的にも優れている。」
「手の痛みを何倍にも返してやるよ。」
振り返らなくても分かるが、期待されているようなので仕方なくゆっくりと立ち上がって向き直る。やはりさっきの嘴男と鴉人間、そして全身羽根男だ。
羽根男は治癒魔法で手首をくっ付けたようで、キチンと元通り右手首がある。
少しだけ心配したが、問題なくて何よりだ。
「混ざりものの女は後で相手してやるよ。その前に…。」
「あぁ、お前からだ。」
ニヤニヤと笑いながら、それぞれが手に大振りの刀やハンマーを持っている。
バカはバカなりに、御決まりの台詞があるらしい。何処ぞのアニメに出てくるチンピラのように、アルフォシーナに気持ち悪い視線を向けていた。
「…純血がそれほど高貴なのか?」
俺は小首を傾げ、バカ面3人組に問い掛ける。
まぁ初めから答えを期待していた訳じゃないが、魔王知識では力が全てとあるのだ。
「何!」
「よせ、人族には分からない事だ。」
「ってか、人族も純血主義だろ?混ざりものは同族ではなく、魔物か魔族扱いだもんなぁ?」
こちらを小バカにした態度で、明らかに見下している。
そして3人組の反応から、案外鬼族鴉天狗種の考えは人族と近いのだと感じた。血筋も考えようによっては残酷である。ハーフとかクオーターとか、同族の中で区別をしている前世でも同じ様な問題があった。
「俺は、魔族は力が全てと思っていたがな。」
「弱い者程血筋にうるさい。血が近くなると、強くなるか弱くなるか極端。」
俺の独り言にアルフォシーナが答える。
どうやら涼しい顔をしていながらも、腹に据えかねている感じだ。
まぁ、都度相手にするのも馬鹿馬鹿しいがな。