4.魔王が仲介します─2
「祭り会場の外は、魔力が復活する。」
「あぁ…だからか。」
アルフォシーナが小さな声で俺に告げてくる。
鬼族鴉天狗種祭り会場内は、争い事を避ける意味合いもあるのだろう。何等かの方法で封じられていたようだ。
まぁ、それも完全にではないだろうがな。
「何、無視してんだよっ。」
「お、おい。何かおかしくないか?」
頭に血が上っている一人は、人形に近いが嘴を持っていた。肩の辺りに二つの小さな鴉羽根。
そして仲間の血を見た事で少し冷静になったのか、俺に違和感を感じているもう一人は大きな鴉人間といった風体。蹲っているのは人形ではあるが全身に羽根がはえている。
「何、ビビってんだよ。コイツは羽根もない人族だぞ?」
「い、いや。魔力を持ってるじゃないか。」
「何?」
そして俺を凝視してくる。
やめてくれ、気持ち悪い。男に見つめられる趣味はない。
俺が僅かに不快感を表すと、すぐにアルフォシーナが男達との間に立った。
いや、待て。それもどうかと思うぞ?まるで俺がアルフォシーナを盾にしているかのようじゃないか。ってか、隠しきれてもいないけどな。
「アルフォシーナ。」
「だって。」
名を呼ぶ事で制したのだが、彼女からは一言で不満を返された。
しかも、だってって何だよ。可愛いじゃないか。
「お前、人族じゃないのか。」
「…誰もそんな事を言ってないだろ。」
無言を通してもバカには通じず、溜め息をつきながら仕方なく応じる。
力の弱い者は、相手の力量を測れないようだ。
「去れ。」
少しばかり威圧を込めて告げる。
「何をっ!」
「おい、やめておけって。」
だが嘴の奴は怒りがおさまらないようで、血走った金色の瞳を向けてきていた。けれど、鴉人間に止められる。
ってか、俺の瞳も金色─魔族の色─だって気付けよ。
「コイツも同じ目に合わせないと気が済まないだろっ。」
大きく嘴を開けて喚いているが、鴉人間がそれに耳打ちする。
「ちっ。」
するとこちらに向かって盛大に舌打ちした後、3人で集落の方へ立ち去っていった。
「魔王様、ごめんなさい。」
「ん?別にアルフォシーナが謝る事はないだろ。あんなのは何処にでもいる。それより後々何かしてきそうだが、アルフォシーナは大丈夫…だとは思うけど。」
手荷物一杯のまま頭を下げるアルフォシーナに、俺は逆に彼女の方が心配になる。
だがあの程度の魔族に遅れをとる筈もなく、とりあえず苦笑いをしておいた。
が、本当に何処にでも胸糞悪い輩はいるものである。