3.魔王は雑用係ではありません─3
だが、それがこの汚部屋掃除とは割に合わない。
「はい、休憩終わり。掃除の続きだ。」
「え~。」
「え~、じゃない。フランツか。掃除が嫌いなら、汚さなければ良いだろ。」
「難しい。」
俺の言葉に、ゼロタイムで答えるアルフォシーナ。
そうだろう、分からなくもない。それでなければこれ程までにゴミ溜めになるまい。
「なら、物を増やすな。無駄に動かすな。」
「ううう…、魔王様酷い。」
「うるさい。文句を言う暇があるなら、この部屋をどうにかしろ。ハッキリ言って、風で全てを吹き飛ばしてやる方が至極簡単なんだからな。」
「はいぃっ。」
せめて今日中にどうにか目星をつけたいしたい俺は、少しばかり威圧を込めてアルフォシーナに命じた。
そのせいで鬼気迫る様子で片付けを開始するアルフォシーナ。
半分本気だったんだが、これは本当にその方が楽だろう。一度空にしてから、いるものだけ中に運び込んだ方がどれだけ楽か。
それでもそうしないのは、アルフォシーナの教育の為でもある。このままゴミ溜めに生息する事を標準とされては困るのだ。
「頑張れよ、女子。次期宰相候補に女がいる意味を考えろ~。ダミアンは別としても、フランツやコンラートに出来ないモノをアルフォシーナとミカエラには求められているんだと思うぜ?」
「あたしに出来る事。」
アルフォシーナは手にした書物に目を落とす。
考えるが良い。役割を与えられたのならば、その意味が必ずある筈だ。─俺も、だがな。
◆ ◆ ◆
それから陽が落ちるまで片付けをした。
ってか、それだけかかったっての!
「終わった…。」
「うん…。」
さすがにくたびれた俺とアルフォシーナは、小綺麗になったソファーに二人して腰を沈める。
いくら食事を必要としないとはいえ、肉体労働の後には甘いものが食べたくなるな。
「アルフォシーナ。あのバオブの蜜、一つくれないか?」
「うん。魔王様、バオブの蜜食べる。」
アルフォシーナは嬉々として麻袋を差し出してきた。
相変わらず、何処から取り出してくるんだか。
「サンキュー。あ~、旨い。」
「うん。美味しい。」
互いに一欠片ずつ手に取り、齧る。
このほの甘い感じが、疲労を溶かしてくれる感じがするぜ。
俺とアルフォシーナは、暫く肩の力を抜いてまったりとしていた。
何だか、思い切り雑用係じゃね?俺。他の誰もこの部屋に立ち入らなかった理由が、今なら良く分かる。アルフォシーナのこれは、たぶん1回や2回言ったくらいでは治らないだろうけどな。はぁ…。
頼むから明日汚部屋に戻ってるなんてオチはやめてくれよ?