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召喚魔王の俺  作者: まひる
第2章
85/248

3.魔王は雑用係ではありません─1


「旨いな、これ。」

「うん、美味しい。」

 俺とアルフォシーナは、二人してバオブの蜜を食べながら廊下を歩いている。まぁ、俺が一口食べる間に彼女は一つを食べきっているのだが。

 そして、先程話がおかしな方向に向かったせいでうやむやになっていたが、やはりアルフォシーナにも執務室が与えられているらしい。


 無駄に広い廊下の幾つか角を曲がりながら進むと、濃い茶色の扉の前でアルフォシーナが立ち止まった。どうやらこれが彼女の執務室のようである。

「魔王様、ここあたしの部屋。綺麗じゃないけど、入る。」

「あぁ。」

 アルフォシーナが先に入り、扉を押さえてくれた。

 あ~…、綺麗じゃないってのは謙遜ではないんだな。

 俺は一歩足を踏み入れ、思わず遠い目をしてしまう。


 このアルフォシーナの執務室は、フランツのそれと大きさは変わらない。だが、何故だろう。酷く窮屈に感じてしまうのは、だだっ広い魔王城に俺が慣れすぎた為ではなさそうだ。

「…いつもこんな風か?」

「そう。おかしい?」

 俺の問いに、アルフォシーナは不思議そうに周囲を見渡している。違和感は全くないようだ。


「ここにはダミアンや他の次期宰相候補者達は来ないのか?」

「うん。あたしはここ、寝る時にしか来ない。」

「寝る…ね。分かった。とりあえず急ぎの案件がないなら、ここの掃除だ。」

 一つ溜め息をつくと、俺は開き直る。

 このままでは、他にも汚部屋が増殖しかねない。やるなら出来る限りがモットーだ。


「何で?」

 だが、アルフォシーナには欠片も伝わらなかったようである。逆に小首を(かし)げられてしまった。

「…不自由はないのか?この部屋で。」

「うん。」

「そうか…。だが俺は嫌だ。」

「そうなの?」

「そうだ。片付けるぞ。」

 不毛な問答に強制的な終止符を打ち、俺は一先(ひとま)ず出入り口付近の布山─何故か部屋の片隅に服の山があるのだ─を持ち上げる。

「あっ、それはっ!」

 アルフォシーナの珍しく焦ったような声と同時に、ヒラリと俺の足下に舞い落ちる花びら─否、一枚の布地。

「……………。」

 これは俗に言う、()()()()ではないだろうか。


 脳が大半の機能を停止していたが、何とかそれだけの判別はついた。だが次の瞬間、目の前からその物体が消え去る。

「…アルフォシーナ?」

「なななななな何でもないんだからねっ。」

 顔も首も真っ赤にして、それで何でもないは有り得ないと突っ込んだ方が良いだろうか。

 いや、ここは必死に後ろ手に()()を隠す彼女を許そうではないか。うん、それが良い。俺の精神衛生上、そう判断しよう。


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