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召喚魔王の俺  作者: まひる
第2章
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2.魔王と話しませんか─7


「魔王様ぁぁぁぁぁ…。」

 廊下を歩いていくと、前方から不気味な呼び声が掛かる。

 というか、現時点で俺が通過している廊下の天井も壁も酷い有り様だった。四方を削り取られたようになってるんだ。いや、犯人は分かってるけどな。

 接近禁止と告げられただけあり、先程の声の(ぬし)であるダミアンとの距離は50メートルある。っていうか、廊下の突き当たりから壁越しに顔を出している状況の銀髪。残念なんだよな、本当に。


「どうした、ダミアン。」

 左官のように壁補修キットを手にしているダミアンが見えるものの、俺はそれに触れる事なく問う。

 これだけの廊下の修繕に、いったいどれだけの時間が掛かる事だろうとか、命じた俺が他人事のように思ったのは内緒だ。


「魔王、申し訳ございません。人員を少々頂きたいのですが…。」

「何で?壁を壊したのはダミアン。修理するのは勿論ダミアンだろ。」

 ダミアンが話終わる前に食い気味で告げると、さすがに泣きそうに顔を歪ませる。

 どうやらこれはM気質を刺激するものではないらしい。ふむ…難しいな。


「魔王城を維持するのは俺の仕事だが、これだけの修繕に魔力を使うのはなぁ。」

「あ、いえ…そんな事を言っている訳では…。」

「直すのは簡単だが、やった事に責任を持たせないとなぁ。」

「はい、その通りです。」

 俺の呟きに、都度相槌(あいづち)のように返事をするダミアン。

 そう。俺が魔力を込めれば、時間を巻き戻したかのように修繕可能だ。これは魔王の存在で魔王城が維持されているという、魔族でいうところの魔核なのだろう。

 因みに、自然治癒するかのごとく放っておいてもいずれ直る。気分の問題だ。


「で、ダミアン。用は何だ?」

「何もございません、魔王様。」

「そうか。」

 俺はそうダミアンに言わせた後、何事もなかったかのように立ち去る。

 背後からシクシクと情けない声が聞こえるが無視だ。

 とにもかくにも、当初の予定通り次の候補者観察といこう。─といっても、今の俺には居場所の選択肢があまりない。


 謁見の為の玉座の()とそれに繋がる自室。後は宰相執務室くらいが普段の俺の生息圏だ。だが宰相執務室は基本的にダミアンの仕事部屋だったりする。

 それを間借りする形で居座っている俺には、そこが居場所であると声を大にして言いがたい。うん、つまりは玉座の()と自室くらいしかないって事だな。


 この広い魔王城で─と考えると少ない気もするが、そもそも部屋を持っていない奴の方が多い。次期宰相候補者達も、城の中に自室がある訳ではないのだ。

 5人が5人とも執務室が与えられているものの、あくまで仮の部屋。立場が確定すれば執務室も変わる。


 5人とも次期()()候補なのだから。


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