2.魔王と話しませんか─6
「だからマジ諦めろ。下手したら腹から捌かれるぞ。」
「うひょ~、怖いなぁ。分かったよ~、魔王様ぁ。無詠唱だけでも厄介なのにぃ、体液自体が攻撃手段なら諦めるしかないよなぁ。美味しそうなのは見た目だけか~っ。」
俺の言葉に、フランツは聞いていて全く嬉しくない返答をしてくる。
食糧として見られるのは勘弁だが、何だか酷く引っ掛かる言い方だな。複雑なんだが、これで良かったんだよな?
「とりあえず、フランツの仕事具合は確認した。これで終了とする。」
「え~っ。もう終わりなのぉ?」
俺が終わりを告げると、何故か不満を漏らすフランツだ。
いやいやいや、嫌がってたのはお前だろ?それに仕事に対すると言うよりは仲間にだが、真剣に向き合っているのが良く分かったからな。だからこその部下からの信頼なんろうし、俺からの見た目評価に反して凄く慕われていたし。
「あぁ、大丈夫だ。総合プラスだし。」
「何だよぉ、それぇ。ぷら?って何さぁ。」
「え…あぁ、プラスな。追加だよ、俺の中のフランツ得点にな。」
問われて言葉を言い直しつつ、評価を考える。
初めの印象では、敬意もくそもない自己中男だと思っていたのだ。今でも対応は俺に対すると言うより主従のものですらないが、それでも一歩内側に入った感がある。
どうやらフランツは、一度自分の内に入れたら仲間意識が芽生えるというか守るべき対象になるというか、そんな感じなのかもしれない。
「ふぅ~ん。まぁ、どちらでも良いけどさぁ。俺は宰相候補者ではあるけどぉ、あの銀髪のように書類とだけ向き合ってるってのは性に合わないんだよねぇ。」
「あぁ、今回フランツを観察してきて分かる気がする。魔族っていうか、仲間が好きだよなフランツは。自分の認めた相手を信頼するというか、大切にするっていうか。あの多種多様な魔族の軍部を上手く取りまとめるなんて凄いよ。」
「な…っ。ほ、誉めたって何もしてやらないんだからなっ。」
手放しで賞賛すれば、髪と同じように真っ赤になった。
ってか、デレたよ。新しいパターンだな、おい。実は誉められ慣れてないのか?
「大丈夫だ、そんなのを求めてる訳じゃないから。俺は外見じゃなく、中身を見たいだけだからさ。」
笑顔を返し、赤面している元自己中男に背を向ける。
たぶん、自分を落ち着けるのに時間がいるだろうからな。珍しいものを見たから、それだけで今回は良しとしよう。
「さてと、次の候補者を観察してくるかっ。んじゃな~。」
「お、おぅ…。」
後ろ手に手を振り、そのままフランツの執務室を退室する。っていっても、扉はダミアンがぶち壊したからあってないようなものだけど。
そうして振り向く事なく俺はフランツと別れる。
何だか色々と危機的な状況もあったけど、終わり良ければ全て良し的な?
人同士でも内面を知るのは難しいんだから、魔族ともなれば尚更だなと痛感した俺だった。