2.魔王と話しませんか─4
「けど、繁殖力は種族の差だろ。寿命も違えば能力も違うんだ。吸血種だって、増えはすれども激しく減りはしてないだろ。」
「そりゃねぇ?俺達だって、頑張って繁殖しようとしてるし~。けどさぁ、俺達は元々女型が少ないんだよぉ。この100年かけて、50も増えてないんだぜ~?」
俺の指摘に、フランツは首を竦めながら答えた。
確かに魔王知識でも吸血種の女性は少ないとある。純血を重んじるだけあって他の魔族と血の交わりを持つ事はしないし、人族となんて以ての外だ。
いや、交配出来ない訳ではない。ただ明らかに能力が劣るし、それ以上に偏見が大きいのだ。異端と扱われ、差別されてしまう。過去に前例がなかった訳ではないらしい。
「ゆっくりやっていくしかないだろ、そんなの。魔族の割合的にも鬼族は少ないんだ。竜族と合わせたって2割。寿命と能力を鑑みて、妥当としか言いようがない。」
それしか言いようがないが、自然界のルールに則ってもこれが当たり前だ。強者が多ければ、逆に世界が崩壊する。
「ちえっ~、他人事だと思ってさぁ?魔王様は良いよな~、種族の壁がなくてぇ。」
頭の後ろで腕を組ながら、フランツは自らの執務机に戻った。
だがその言葉を聞いて、俺自身が疑問に思う。確かにリミドラと婚約はしたが、相手は犬種の魔族だ。元人族の俺と、はたして子孫を残す事が可能なのか。
「そうか…、俺はリミドラと…?いやいやいや、大丈夫なのか?」
「何さぁ、魔王様ってば今、ドエロな考え中~?」
「ち、違うぞっ。」
「良いなぁ、魔王様はぁ。あ、どうせなら俺の子を作ってくんない~?魔王様となら、混血にならないような気がするんだよねぇ。」
俺の沈黙を勘違いしたフランツは、何故かそんな考えになって再び迫ってきた。
いや待て、おかしいだろ。そもそも腹に魔核─魔族的な卵子─がなければ、それに魔力の放出を受けさせての受胎にはならない。
「ちょ、待てフランツ。考え方がおかしな方向になってるだろ。俺は男だ。年中放出男のダミアンと似たり寄ったりな方向性は勘弁してくれ。」
「何、それぇ。嫌だよぉ、あんな銀髪女顔と一緒にしないでくれよぉ。」
俺の言葉に、フランツは明らかに嫌そうな表情を浮かべた。
女顔…。確かにダミアンは顔が綺麗である。次期宰相候補者達の中でも、お色気ムンムンキャラのミカエラと良い勝負が出来そうな程だ。─中身は残念変態男だが。
俺は思わず吹き出してしまい、それを受けてフランツも笑い出す。
何だか、酷く和んでしまった。