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召喚魔王の俺  作者: まひる
第2章
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1.魔王は人ではありません─10


解除(リリース)。」

 戦闘が完全に終わった事を受け、俺は全ての魔法を解除する。自身に纏う火の鎧や風の壁を消したのだ。

 これで鍛練場を覆っていた風の壁も消え、普段の様子を取り戻す。まぁ、あちらこちらに先程の戦闘の傷跡があるものの、許容範囲だろう。

 そして鍛練場の隅に移動し、フランツの観察をさせてもらう事にした。


 ◆ ◆ ◆


 (しばら)く経った頃。

「…あのさぁ~、すっごくやりにくいんだけどぉ。」

 赤い髪を追いながら観察を続けていたのだが、フランツの方から声を掛けてくる。しかも凄く嫌そうに、だ。

 別に俺は邪魔をしてないし、初めからウロウロする宣言もしている。


「何か問題があるのか」

 俺はわざとらしく問い直した。

 と言うか、フランツの言いたい事が分からなくもない。ジロジロ見られ続けるのは、確かに好ましくはない。が、これも俺にとっては仕事に繋がるんだ。


「魔王様ぁ。それ、分かって言ってるでしょ~。」

 嫌そうな顔を隠さずに答えるフランツ。

 本当にコイツ、俺の前で取り繕う事をしない。

「普段のフランツを観察中だ。見られて困る事があるのか?」

「別にないけどぉ…。すっごく、鬱陶しいんだよねぇ。」

 ハッキリと告げられる悪態にも、今は嫌な気がしなかった。

 取り繕わないという事は、偽っていないと受け取って良いのだろうか。


「そんなに繊細なのか?」

 (あざけ)るように問えば、フランツはフンと鼻で笑う。

 ここまでブレないのだから、ある意味好感が持てるかも知れない。

「俺は魔王様と違ってぇ、純真で感受性が高いのだよ~。」

 腰に手を当て、フランツから鼻高に告げられた。

 それを聞いて、思わず俺は笑いが堪えられなくなる。

「くくくっ、純真って…っ…、面白いな。」

「何だよぉ、失礼だな~っ。」

「いや、マジ…。」

 腹を(かか)え笑う俺に、フランツは憮然と睨み付けていた。だが、この素直さは良い。

 妙に手が早いのと口が悪いのを除けば、これはこれで悪くないと思った。しかし彼いわく、邪念がなくて心が清らか?何処がだ。


「はぁ…、面白かった。で、フランツ。」

 散々笑った後、俺は真面目にフランツに問い掛ける。しかしながら、フランツは既にムスッと不貞腐れていた。

「何だよぉ、今更~。ってか、本当に俺に聞く事、あるの?」

「あぁ、ある。フランツの人間嫌いの理由は何だ?」

 聞く前から不機嫌ではあったが、俺が問い掛けた途端、射殺しそうな鋭い視線を向けられる。

 どうやら、彼のスイッチを押してしまったらしい。


「…しえない。」

「え?」

「教えないって言ったの。本当に嫌い。」

 いつもの間延びした喋り方を忘れる程、触れては欲しくない内容だったようだ。プイッとそっぽを向き、俺に背を向けて足早に去っていく。

 これ、調べた方が良いな。

 俺はその背を追う事なく、静かに見送るのだった。


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