1.魔王は人ではありません─9
「飽きてきたから、魔法使っちゃうよ?」
結局、レジスとルフィノの合同攻撃も、俺の肉体を掠める事はない。
勿論彼等は本気なんだろうけど、何せ俺、魔王だし。
「っく!」
と、俺の魔法使う宣言を受け、レジスが水魔法を放ってきた。さっきも見たドリル。
水流が凄まじい勢いを持って、俺の顔面に向かってくる。けど、そんなものは効かない。
「氷槍。」
すぐに俺は氷の槍を形成して、その水流に当てた。瞬間的に凍り付く水ドリル。
ついでにレジスの腕ごと凍らせようとしたけど、脇からルフィノが火の玉を放ってきた。
「危ないですよ、レジス。」
「す、すまない。」
なかなかの威力で、一瞬にして俺の氷の槍を溶かしたルフィノ。
レジスを宥める余裕まで見せている。
ってか、やっぱり火属性かよ。しかも、かなりの高温。
素質が十分にあるって事だよな。あ、鬼族の部隊長だもんよ。レジスもだけど。
「やるねぇ、ルフィノ。」
「いいえ。今のは、貴方の魔力練度が足りなかっただけですよね。」
誉めてあげたのに、簡単には乗ってくれない可愛くない性格のようだ。しかも練度─魔力の練り込みが甘かった事を見抜かれている。
いやいや。あの時に本気出してたら、レジスは今頃串刺しだよ?
俺の魔王としての魔力は、当たり前ながら上質。それを本気で練り上げたら、それこそ魔族殲滅可能な程なのさ。勿論、俺一人でね。──しないけど。
「完敗です、魔王様。」
そこで突然、ルフィノが片膝を折ってきた。
マジ、ビックリ。
隣にいるレジスも、驚きの表情してるぞ。
「竜族の各部隊長はいかがなされますか?」
そんなレジスに構う事なく、ルフィノは上空を見上げて問い掛ける。
うん、竜族ってば、ずっと飛んでるもんな。
「構わない。我等が力をぶつけ合えば、魔王城など一溜まりもないからな。」
その中の1体の竜が静かに告げ、他の様々な色や形の竜族も頷いている。
案外、彼等が一番冷静なんじゃね?
「なぁ~んだ、ここまでかぁ~。」
そこに、空気を全く読まない声が入った。勿論、フランツである。
視線を向けると、さも詰まらなさそうに首を竦められた。というか、初めから結果が分かっていたかのようで。あ、勿論亜人や獣人達は既に構えた武器を下ろしている。
「フランツ。」
「あ~、説教はいらないからねぇ~。」
俺の呼び掛けに、片耳に指を突っ込みながら背を向けるフランツ。いや、別に文句はないんだけどな。
「さ~、皆。通常の鍛練に戻ろうか~。」
俺に背を向けたまま、フランツは騎士団へ指示を飛ばしている。何だか、すっかり俺の存在は忘れられているようだ。
それは少しばかり気に入らないが、ここに来た俺の目的は“構ってちゃん”じゃない。フランツの人となり─魔族なり?─を見極める為である。拗ねてどうするんだ、俺。