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召喚魔王の俺  作者: まひる
第2章
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1.魔王は人ではありません─1


 さてと、漸く魔王としての仕事に本格復帰だ。

 …と言っても、当初の次期宰相候選出なんだがな。─マジ、俺ってば何もしてねぇ。


「魔王様、お呼びでしょうか~。」

 謁見の間に響く声。トーンが高めだが、聞いている分には心地好い。

 特徴ある長いウエーブの赤髪と、その背に蝙蝠のようは膜状の翼をもつフランツ・ナスタージス・ベル。


 問題は、コイツの態度くらいか。


「呼ばれた理由は分かってるだろ。」

「…さあ~?あ、俺は魔王様の夜伽の相手はしないぜ~?」

「いらん!ったく…、今日はフランツと行動を共にする。」


 俺が告げると、あからさまに嫌な顔をするフランツだ。

 本当にコイツは、俺を─魔王を敬う事を知らん。


「嫌だね~。俺、人族嫌いだし~。」

「何度も言うが、俺は既に人族ではない。」

 隠さず言うだけ良いのだろうが、フランツは人族を酷く毛嫌いしている。

 そして同時に、元人族である俺の事も嫌いだ。


「元、人族だろ~?」

「現、魔王だ。」

「人族は餌だし~。あ、そうだ~。魔王様、俺に食われない?」

「却下。人の話を聞け。」

「人族嫌い~。」


 そんな押し問答である。全く話にならない。

 いつもならこんな時、ダミアンが制してくれる。だが、今はわざと別の用を与えてあり、ここには俺とフランツだけだった。─無茶苦茶渋られたがな。


「フランツが俺の事を好こうと嫌おうと、別に構わん。だが、次期宰相候補としての仕事はしてもらう。」

「嫌いだけど、それは分かってるよぉ。俺、今の地位も名誉も捨てる気ないし~。」


 ケラケラと笑いながら、フランツは俺に背を向けた。

 普通、謁見の間に来たら、片膝ついて頭を垂れる。

 コイツにはそれがない。入室した時同様、立ったままだった。


「おい。何処へ行く。」

「はあ~?もう良いっしょ。」

 俺が呼び止めると、あからさまに嫌そうな顔で振り返る。

 本当、ある意味ぶれないよな。


「終わったと言ってない。」

「内容は聞いたよ~。勝手についてくれば~。あ、それよか。」

 嫌々応じていたフランツだったが、急に玉座の方へ足早に歩いてきた。

 何だ…?ってか、接近には嫌な予感しかしないがな。


 フランツには一度襲われかけた経験がある為、必要以上に近付く事を避けていた。

 つまりは、一定距離内に入られると、自然と身体が拒絶反応を示す。


「なぁ~に?魔王様、俺が怖いの~?」

 全身に力が入っていた事に気付かれ、バカにしたように小首を傾げてきた。


 それでもフランツの歩みは止まらず、気付けば後1歩で手を伸ばせば届く距離。

 俺は玉座に腰掛けているから、フランツに対し、ほぼ真上を見る形で見上げている。


「…何のつもりだ。」

 出来る限り、押し殺した声で問う。

 かといって、俺の感情の波は連結(リンク)されているので、嫌でも彼等に伝わってしまうのだが。


「魔王様、一人だし~?これ、俺への貢ぎ物って扱いじゃないの~?」

 そして、ニヤリと笑みを浮かべるフランツ。吸血鬼特有の長い犬歯が見えた。


 冗談じゃないぞっ。


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