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召喚魔王の俺  作者: まひる
第1章
63/248

6.魔王は売約済みです─9


「わ、私は小さくないですぅ。」

 抱き上げてるリミドラが、思い切り不満を顔に出している。

 しかし、唇を(とが)らせて頬を膨らませたところで、可愛いだけなのだ。


「いや、小さいと言ってもだな。その…、幼いと言うか…。」

 説明に困り、言い(よど)む。

 そもそも、俺にロリの趣味はない。

 13歳と言っていたが、どうみても幼女体型なのだ。背丈は130センチ程だが胸はなく、むしろ腹部の方が出ている。


「そ、そりゃ…ご飯は1日2食、食べられたら良い方ですけど…。」

 自分の身体を見るように視線を下げるリミドラ。

 うん、成長に(ともな)う栄養が足りてないんだろうな。


「…それ、普通なのか?」

 (わず)かに眉根を寄せた俺だったが、リミドラは急に不安を見せた。

「ご、ごめんなさい、魔王様。獣人族の食事量が多い事は分かっています。」

 そして突然の謝罪である。


 えっ?何?俺、謝らせるような事を聞いた?ってか、食事量が多い?

 言葉に出さずとも、俺の頭の中は疑問と焦りで混乱していた。


 すると、俺の背後から天の声─じゃなく、ダミアンの声が聞こえる。

「恐れながら、魔王様。魔族の食事は人族と(こと)なり、日に3食ではございません。力ある魔族ほど、大気中の魔力から摂取する事が可能になる為、食事の回数が減るのです。…ともあれ、今そのお話はお控えくださいませ。お二方の仲の良さをお見せ頂く場にございます。」

 淡々と小声で告げられた俺は、不意に現状を思い出した。

 ヤバ…、今は式の最中だったぜ。


「リミドラ。とりあえず、この話は後でな。それに怒ってる訳じゃないから。」

「…はい、魔王様。」

 慌ててリミドラの顔を見る。

 ダメだ、不安感が抜けてない。


 不興を買ったと思っているのか、眉尻を下げるリミドラは、(あき)らかに先程までと空気が違う。

 くそ…、俺のミスだな。ダミアンの言うように、今ここで話す内容じゃなかった。


 しかしながら、反省をしたところで、言い放った言葉を元に戻す事は出来ない。

 必要なのは、現状をいかに早く復帰させるか。


「リミドラ…。」

「…っ!」

 声を掛け、不安そうに見上げた鼻先にキスをする。


 いや、俺もメッチャ恥ずかしいんだからなっ。

 こんなに大勢の人前─あ、魔族前、か?─で、鼻とはいえ、キスをするなんて、思ってもみなかった。


 観衆の一斉(いっせい)(はや)し立てる声が周囲の音を消し、顔を真っ赤にしたリミドラと目が合う。

「これでちゃんとした婚約者だな。」

 どうしても照れが残るが、俺はハッキリと言葉にして告げた。


 これから先も、何かに不安になる事もあるだろうが、事実は変えられない。

 俺はリミドラにも、事実を認識してほしいと思った。


「はい、魔王様。」

 頬を赤く染めながらも、フワリと微笑むリミドラ。

 決して軽くはないのだが、俺は抱き上げている彼女を更に高く持ち上げる。

 それに呼応して、歓声がいっそう大きくなった。


 まだ魔王になって何も残してない俺だけど、彼女を誠心誠意、守ると誓おう。

 俺は観衆に手を振るリミドラに視線を向け、知らず柔らかい笑みを浮かべていた。


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