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召喚魔王の俺  作者: まひる
第1章
61/248

6.魔王は売約済みです─7


 (わず)かに揺れる大きな金色の瞳。

 この世界の─魔族の瞳の色に、俺はもうすっかり慣れてしまっていた。


「取り消すなら、今しかないがな。」

 少しだけ自嘲(じちょう)気味(ぎみ)に笑う。

 さっきまで俺も、散々ダミアンにぐずっていたんだから。


「そんな事、ないです。ただ…、魔王様のお気持ちも考えず…勝手な事をしてしまって、申し訳ございませんでした。」

 勢い良く頭を下げるリミドラ。

 一瞬驚いたが、何だか逆にスッキリとした気持ちになる。


 あぁ…俺、自分の意思を確認して欲しかったんだ、って気付いたからだ。


「うん。何かもう、その言葉だけで良いよ。」

 俺は空いたもう片方の手で、リミドラの頭を優しく撫でる。

「あの…許して、頂けるのですか?」

 おずおずと顔を上げるリミドラだが、垂れていた尻尾が微妙に上を向いて揺れていた。


 確か犬の尻尾って、感情が外に出るんだったよな。

 そんな事を思いながら、俺はリミドラに笑い掛ける。

「許すも何も、俺は怒ってないからさ。」

 そう。怒ってはいない。()に落ちなかっただけだ。


「あの、でも…っ。」

「じゃあ、リミドラはどうなんだ?俺の嫁に、本気でなる気か?」

 更に言い(つの)るリミドラに、俺は真顔で問い掛ける。


「も、勿論ですっ。あ、魔王様が…お嫌でなければ…ですけど…。」

 勢い良く返事をしたものの、後半フェードアウトしていく声。

 どうやら、自信が続かないらしい。

 周りに色々言われたのか、出会った時の勢いがないな。


「俺は正直、面倒だと思ってた。でもまぁ、リミドラとなら上手くやっていけるかも…。何て偉そうな事言っても、まだお互いを知っている訳じゃないんだけどな。」

 俺の初めの言葉で耳と尾がまた力をなくすが、話の進行と共に少しずつ蘇る。


 あまりにも分かりやすい感情バロメーターに、俺はとうとう笑いを堪えきれなくなった。

「くくくくく…。」

「ほぇ?…な、何ですか?何で魔王様、笑ってるんです?僕は真剣なのに…、魔王様っ。」

 俺の押し殺したような笑いに、一瞬(ほう)けたリミドラが、顔を真っ赤にして怒る。


「いや…、可愛いなと、思ってさ。」

 笑いながらだから、言葉が変に途切れてしまう。

 けど、本音だった。


 こんな(ふう)に女子と話すの、学生生活ではなくなってたな。

 小学校の頃にはあった異性との会話も、中学・高校へ行くのと比例して、同性だけのものになっていった。


 正直、モテた訳じゃないし。

 今の俺に興味を持たれるのは、あの頃になかった特別があるからなんだ。

 魔王なんて肩書きがなかったら、やっぱり俺は今も、─悲しいかな─特別にはなれてないんだと思う。


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