1.魔王になりました─2
「では、改めまして…。わたくし、ダミアン・ルーガス・ヘイツは、魔王様のお迎えをするべく遣わされた使者であり、次期宰相候補の一人にございます。」
姿勢を正したダミアンは、その見てくれからも何となく分かるが、良いところの血筋だろうと思われた。
変態だが………って、何だって?
「一人?まだ他にもいるのかよ。」
俺が気になったのは、そこだ。
宰相とか言うのが何を意味するのか分からないけど、つまりは栄えある地位が約束されているって事だろ。
「はい、相違ございません。わたくしの他に、四人。宰相候補から外れたとしても、四魔将軍として名を馳せる事が約束されております。」
真っ直ぐ向けられた瞳からは、嘘偽りの欠片も見当たらなかった。
ってか、金色の…猫みたいな目だな。綺麗だなんて、言ってやらねぇけど。
さっきみたいになるのは、勘弁してほしい。
「…ふうん。で、喚ばれたとかってのは?」
「魔王様は魔王様になるべく、こちらの界へ喚ばれたのでございます。」
俺が聞いた事には答えてくれる気はあるのだろうが、イマイチ真意が伝わらない。
「良く分からん。で、これも俺がやったと?」
「はい、相違ございません。認証の儀を執り行っていないにも関わらず、魔王様は素晴らしいお力を有しておられるようでございます。」
またダミアンが両手を組み、恍惚としだした。
もう良いって。これ、面倒臭いな。
「あっそ。とりあえず、ちゃんと説明出来る奴に会わせて。」
俺は都度ダミアンの行為を注意するのが面倒になり、そう言って話を打ち切って立ち上がる。
おぉ、地面がフワフワ。
「あ、ダミアン。これって、元に戻るの?」
不意に気になった。
ここが何処だか理解は出来てないけど、この自然を破壊したのが俺だと言われて、平静ではいられない。
「はい、勿論にございます。落下の際の衝撃を和らげる為、魔王様は局所的にお力を放出されました。光の球にお身体が包み込まれた時の美しさと言ったら…。」
「それで?光の球に身体が包まれて、その後どうなったんだよ。」
ダミアンの恍惚状態に付き合ってはいられない。
俺はさっさと質問を浴びせ、疑問を解消する事にした。
「は、はい。光の球は徐々に落下速度を緩め、この嘆きの森に降りました。それはもう、触れる全てを粉砕するかのように。この、全てが大地へと返った現状が、先程まで森の一部であったものでございます。」
つまりは、マジで俺がやったと。
粉砕?記憶にございません…とかって、ありか?