6.魔王は売約済みです─2
あれから平穏な日常が戻り、俺はダミアン付きなら、城内の何処を歩いても問題ないまでになった。
日に日に次期宰相候補者達が魔王城に戻ってきており、それと同時に、リドミラとの婚約発表も近付いて来ている。
「蒼真ぁ。遊んでぇ?」
相変わらず身体のラインを強調した薄着で、柱の横から足を出す色気ムンムンのミカエラ。
何の遊びをする気だ、こら。
「遊ばん。」
溜め息をつきながら返答し、その横を通り過ぎる。
これから宰相執務室に行こうとしていたのだ。
それにしても、無駄に広い通路に、立ち並ぶ無駄に大きな柱。これらは人が一人、優に隠れるサイズがあった。
「あ~ん、蒼真ぁ~。」
「ダミアン。こういう柱は、不用心じゃないのか?」
「そうですね。今まで何とも思いませんでしたが、確かに細身の者でしたら、身を潜める事が可能ですね。」
無視されたと訴えるミカエラを放置したまま、俺は安全性をダミアンに問い掛ける。
ダミアンもそれへ真面目に切り返しつつ、俺に寄り掛かろうとするミカエラを片手で制していた。
「んもぅ…蒼真、意地悪ぅ。いつもダミアンちゃんとばかり一緒で、わっちはつまらないのよぉ。」
訴えながら自分の身体を抱き締めるようにする為、余計に胸が強調されている。
ってかミカエラ、普段は何をしているんだ?
「ミカエラ。遠征、ご苦労だった。通常の仕事に従事してくれて構わないぞ。」
一旦足を止め、とりあえずミカエラに労いの言葉を掛ける。
だが、ミカエラから思わぬ切り返しを受けた。
「わっちの仕事はぁ、お風呂と自分磨きなのよぉ?」
「は…?」
思わず、素で聞き返してしまう。
いや、待て。これは謙遜なのか?
「早くわっちの所に来て、一緒に遊ぼうよぉ。」
「…遊ぶ、とは?」
額を押さえつつ、甘えてねだるミカエラに問う。
「え~?そんなのぉ…、ここでは言えないわよぉ。」
クネクネと身体をしならせ、何故か照れるミカエラ。
おいおい、言えない事って何だよ。
「…ダミアン。次期宰相候補者の選抜基準は、特定の変質性か?」
思わず遠い目をしながら、ダミアンに八つ当たり気味の問い掛けをした。
だが、ダミアンは一瞬唖然としたものの、すぐにいつものように直立姿勢をとる。
「は…、いえ。わたくしは、詳しい事は分かりかねます。魔法士様が全てを担っておりますので、詳細は…。」
「良いよ、分かった。…真面目に答えるなって。」
あまりにも迷いのない返答であった為、俺の方が逆に反撃を受けた感じだった。
はぁ……、俺がおかしいのか?
魔族なんだから、人としての常識が当てはまらない事を、頭では理解してるんだけど。
何処か皆、何故か変質的なんじゃないかっ?
誤字訂正(2016,04,28)