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召喚魔王の俺  作者: まひる
第1章
55/248

6.魔王は売約済みです─1


「魔王様。」

 ダミアンの声が聞こえる。─が、聞こえない振りをする俺だ。


 もう…、勘弁してくれよっ。

 自室に引きこもっている俺は、机に伏せるように頭を(かか)えた。


 リドミラとの婚約問題が出てから、今日で2週間が()とうとしている。

 あれだけ大勢の獣人達の前での事だったからか、その()(じゅう)に噂は広まった。


 そのせいで、俺が魔王である事を知らない奴は、国内の何処を捜してもいないんじゃないかってくらいである。

 それまでは、俺の認知度はかなり低かったのに、だ。


「魔王様?」

 再び、ノックと共にダミアンの声。

 リドミラが求婚した事により、他の高位魔族が(こぞ)って娘を推薦してきたのである。

 まだ娘なら良いが、何処かのバカは息子を()してきてたな。


「…どうせ肖像画だろ?」

 扉を開ける事なく、俺はダミアンに返した。

 毎日毎日、初めて会う魔族との顔合わせと(しょう)した見合い。

 本当にもう、うんざりだ。


 カチャリと軽い音と共に、ダミアンが入室してきた。

「失礼致します。それもございますが…5日(いつか)後までに戻ってくる次期宰相候補達に合わせ、正式にリドミラ嬢との婚約を発表するとの事です。」

 分厚い羊皮紙の束を持ち、ダミアンは報告する。

 それ、大半が肖像画かよ…。


「俺はまだ、宰相も決めてないんだぞ?」

 不貞腐(ふてくさ)れる俺は、何一つとして、魔王たる仕事をしていない。

「魔王様。落ち着いてください。5日待たずして、候補者達を呼び戻すおつもりですか。」

 (いさ)めるように、ダミアンは静かに告げた。

「くっ…。」

 それを聞いて、俺は歯を食い縛る。


 現時点での次期宰相候補者達は、それぞれが仕事をしているのだ。

 けれども、俺の感情の乱れは嫌でも彼等に伝わる。場合によっては、何を置いても戻ってくるだろう事が、既に実証済みだった。

 正直面倒臭いが、魔王という存在を守る為に、魔族達が作り出したルール。


「他の次期宰相候補者達が戻ったら、なるべく早めに見極めを(おこな)う。ダミアン達も、自分達の身の振り方を早めに知りたいだろうしな。」

 苛立ちを込めて長く息を吐き、続けて宣言する。

「で、それまでは見合いはしない。」


「はい?今、何と…。」

 続けられた俺の言葉に、ダミアンが小首を(かし)げた。

 あ…こっちでは、見合いって言わないんだっけ。


「宰相も四魔将軍も決まってないのに、これ以上初見(しょけん)の奴等を近付けるな。」

 言い方を変え、危機管理の面で忠告する。

 そして俺の思惑通り、ダミアンが短く息を呑んだ。


「も、申し訳ございませんっ。確かにいくら高位魔族と言えども、魔王様に悪意を持って近付かないとは限りませんよね。(かしこ)まりました。このダミアン・ルーガス・ヘイツが、魔王様の盾となりましょう。」

 キリリと表情を改め、ダミアンが告げる。


 本当に、これで変態でなければ…って、無駄な考えか?

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