4.魔王にサカらないで下さい─10
「素晴らしいです、魔王様~…っ。」
恍惚とした表情をして、全身を震わすダミアン。
視界に映ったダミアンは、いつもの変態さをマックスに出している。
「ダミ…ア…?」
呼び掛けようとしたが、酷く口が渇いていて、掠れた声しか出なかった。
全身が痛い。
何とかしなきゃ─と思った瞬間、自分の周囲に拡がっていた黒い魔力が、包帯のように変化して身体中に巻き付く。
あぁ…闇魔力か、これで大丈夫…。
俺は教えられるでもなく、そう思った。
安心した事で、ふらりと身体が傾く。
「魔王様っ?!」
ダミアンの慌てた声。
悪い…。何だか、酷く眠いんだ。
そして俺は、駆け付けたダミアンの腕に受け止められた事を理解しつつ、そのまま瞳を閉じる。
後の事は、何とかしてくれる…だろ?
◆ ◆ ◆
ザワザワとうるさい。
大勢の声が周囲を取り囲み、俺が寝てるっていうのに、関係無く騒いでいる。
「…さい…、ぅる…さいっ!!」
叫んで起きた。
ん?何処だ、ここ。…あ、俺の部屋か。
周囲を見回し、自分の私室であると認識する。
そして、取り囲む奴等─次期宰相候補の面々─を見た。
「何だ、お前等。仕事はどうした。」
「「「「「魔王様っ!」」」」」
俺の問い掛けに、全員が珍しく異口同音で叫ぶ。
ぅお~、ビックリした。何だよ、いったい…?
「俺はせっかく来たんだから、もう少しここにいるぜ。」
「もぅ~、蒼真が驚いちゃったじゃないのぉ。」
「静かにして。魔王様がうるさいって。」
「わたくしがずっとお傍におりますので、あなた方はお引き取りになって結構ですよ。」
「私がお傍に。ダミアンは、職務に戻った方が良いのではないか?」
思わず身体を引いた俺に、今度はお互いに責め合い始めた。
何なんだ、いったい。
「おい、マジでうるさい。コンラート、説明しろ。」
俺は一番簡潔に説明をしてくれそうな、コンラートに声を掛ける。
「はっ。魔王様は城内にて、反政府組織の獣人に拉致監禁され、暴行を受けました。実行犯は既に消滅しておりますが、魔王様はその際の肉体的消耗により、5日程の冬眠状態にありました。」
ビシッと直立不動の体勢をとり、コンラートが説明をした。
うん、凄い簡潔だったな。…って、5日?
最後に見た記憶のあるダミアンに視線を向けると、他の次期宰相候補達といがみ合いながらも、ハッキリと縦に首を振る。
マジか。
「とりあえず、終わったんだな?他に残党がいないか再調査して、俺に報告しろ。」
「「「「「はっ。」」」」」
全員が俺の言葉に、直立不動の体勢をとる。
うん、なかなか気分が良いな。
「ダミアン以外は、解散。」
「「「「はっ。」」」」
「わたくしですか?」
不思議そうなダミアンを残し、不満そうな四人を下がらせる。
そして他の次期宰相候補達が退室するのを待って、俺はダミアンに問う事にした。