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召喚魔王の俺  作者: まひる
第1章
43/248

4.魔王にサカらないで下さい─9


「魔王様っ!!」

 爆音と共に飛び込んで来たのは、長い銀髪を(ひるがえ)した長身の男。

 頭部のクワガタのごとき一対の角には、何故か1体の獣人が突き刺さっていた。


「っ?!そのお姿は…っ。」

 息を()むダミアン。

 目の前に立つ蒼真(そうま)は、腰辺りに申し訳程度の布切れと化した服があるのみ。だが、ほぼ裸身であるにも関わらず、地肌が見えない程、赤黒い液体にまみれていた。


「ま…おぅ…さま…。」

 ガクガクと震える身体に(むち)打ち、一歩一歩、蒼真に歩み寄る。その(かん)に、頭部の角に刺さっていた獣人が霧となって消えた。

 彼の髪と同色の闇魔力が、ピクリとそれに反応する。

 敵対者と見なされたのか、溢れるように周囲に拡がっていた黒い(かすみ)が、意思を持って幾つかに纏まる。


「魔王様。わたくしがお分かりになられませんか?」

 ダミアンが問うも、こちらを見ている筈の蒼真と視線が合わない。

 そうしている間にも、纏まった闇魔力は、十を超えるイソギンチャクの触手状に変化した。


「あぁ…、魔王様…。何故だか、そのお姿が素敵です…。ゾクゾクしてくるのは、どうしてなのでしょう…。」

 ダミアンは恍惚(こうこつ)とした表情で、そんな蒼真を見ている。


 闇魔力の形状が安定したのか、蒼真を中心に四方へ各々(それぞれ)が伸びていった。あるものは地を這うように、あるものは(ちゅう)を探るように。

 その中の数個の触手がダミアンに触れたが、接触した事で敵ではないと認識したように離れる。


 それを見て、ダミアンは(ようや)く、蒼真のすぐそばにある黒い塊に気付いた。

「ソレですか、魔王様に手を出した愚か者は。」

 静かな怒気を含んだ声。今にも斬りかかっていきそうな程、ダミアンは理性が飛びそうな表情をしている。


「…喰って…良い…か…?」

 それを焦点の合わない視線を向け、首を(かし)げていた蒼真。そのボンヤリとしたままではあるが、ダミアンに告げた。


「へ…?あ、いや…、魔王様?」

 ダミアンは思わずと言った感じで、間の抜けた返答をする。

 それでも蒼真は、そんなダミアンに反応を示す事なく、ペロリと唇を舐めた。

「ま、魔王様っ?」

 焦った様子のダミアンをよそに、蒼真は闇魔力で包み込んでいた、獣人魔族を吸収し始める。


 大きな塊であった黒い山が、モコモコと不自然な動きをしながら、縮小していくのだ。

「あぁぁぁ…、魔王様ぁ…。」

 嬉しいのか悲しいのか、複雑な表情を見せて(もだ)えるダミアン。

 そうこうしている短時間の内に、獣人魔族を包み込んでいた部分は消える。


 後に残ったのは、ほんの(わず)かな紺色の毛束だった。 


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