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召喚魔王の俺  作者: まひる
第1章
37/248

4.魔王にサカらないで下さい─3

 背を向けようとした中途半端な体勢で、再硬直した熊男。

 どうやら呼び止められる意味が分からなかったようで、混乱しているようにも見える。


「アルド・パマーさん。こちらの書類には不備があります。訂正し再度提出するよう、ジスヴァルト・ギュンタ騎士団長に言付(ことづ)けて下さい。」

 ダミアンは小さなメモに何かを書き付けた後、アルド─さすがに、熊男じゃないのか─に書類ごと差し出した。

「は、はいっ。」

 熊…アルドはビシッと敬礼をし、(うやうや)しくその書類を両手で受け取る。

 ってか、イチイチ堅苦しいよな。


「それと、書類は自分で持って来るようにと。あれほど言っているのに、(いま)だに人任せとは…。」

 わざとらしく眉根を寄せて、溜め息をつくダミアン。

 銀髪ストレートの美形がやると、それすら絵になるな、くそっ。


 頭にクワガタ角があろうが、爪状の突起がついた茶色の猛禽類的翼があろうが─ましてや変態だろうが、イケメンである事には変わりがない。

 やさぐれるぞ、俺。


「騎士団長ってのは、いつも来ないのか?」

 アルドが退室したのを確認してから、俺はダミアンに問い掛ける。

「はい、申し訳ございません、魔王様。わたくしが政務を代行させて頂いて、約一年。何度も忠告しているのですが、いつまで()っても、アルド(など)下位の者に配達させる始末です。」

 困り顔のダミアンは、普段よりも色っぽい。


 いや、色気を感じてどうする、俺。

 いつもが変態丸出しだから、真面目な場面に慣れてないだけだな、きっと。


「今度、俺にも会わせろ。どんな奴だか確認したい。」

 とりあえず今のところ大きな問題はなさそうだが、余裕がなくなる前に、こういった小さな問題は潰しておきたい。

「はっ、(かしこ)まりました。」

 ダミアンは椅子から立ち上がり、深々と頭を下げる。


「良いって、そういうの。面倒臭いな。」

 思わず鬱陶(うっとう)しげに片手を振った。

「しかしながら…。あぁ、魔王様のいらした界では、身分制度がなかったのでしたね。」

 先程とは違った困り顔を見せたダミアンだったが、不意に俺の言葉の意味を理解したようである。


「まぁ…全くなかった訳じゃないけど、俺自身はただの高校生…学生だったからな。とりあえずの敬意をはらう相手はいたけど、それほど上下関係が厳しくなかったんだ。」

 俺は育ってきた環境の違いを、ダミアンに簡単に説明した。


 だいたい、教師や先輩をとりあえず立てはするものの、本心からの敬意じゃない。

 自分的に絶対的な君主は勿論いなかったし、国の頂点にいる存在ですら、テレビの中の存在だったからだ。


 そんな俺自身が(あが)められる立場になるってのは、本当に複雑な心境なんだよな。


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