4.魔王にサカらないで下さい─1
ふぁ~…、眠い。
朝の光に目を覚まし、やはりこれが現実なのかと一度だけ項垂れた。
まぁ、すぐに復活したけどな。
今は広い食堂にポツンと、寂しいお一人様朝食だ。
いや、実際には一人ではないか。周囲を侍女風な女性型魔族に囲まれているからな。
ただ、食べているのが俺一人。どうやら畏れ多くて、魔王と食事は出来ないそうだ。
くそ…、寂しくなんかないぞっ。
それにしても、一言で魔族といっても、色々な姿をしているな。
獣耳がついた…いわゆる獣人タイプもいれば、鬼のようなタイプ、昆虫タイプもいる。
あ、魔王知識が、見目の整った者程、強い力を持ってると教えてくれた。
「魔王様。本日のご予定は、お決まりですか?」
咀嚼しながらボンヤリとしていた俺に、ダミアンが声を掛けてくる。
そういえば、コイツもずっと後ろにいたな。
「あ~…、そうだな。とりあえず、今日はダミアンの観察をするつもり…だ。」
思わず言葉に詰まってしまったのだが、俺の言葉を聞きながら、ダミアンの表情がこれ以上ない変化をもたらした。
真面目な顔で、予定を確認してきた時は良かった。だが徐々に恍惚としてきて、今では発熱を疑わんばかりの瞳ウルウル、頬はポーっと火照ってる。
本当に大丈夫か、コイツ。
「おい、顔を引き締めろ。」
ムッとして、少し鋭い口調で告げた。
「はっ…、申し訳ございません。あまりの嬉しさに、心ここにあらずといった状態でした。」
我に返ったダミアンは、慌てて言い訳じみた言葉を並べる。
うん、見てて分かったけどな。
「言っておくが、他の奴等が各方面に出払ってるからだぞ?」
誤解を与えないように、初めに釘を刺しておく。
「はっ。承知しておりますっ。一番だからと言って、至極嬉しいのですが、うぅ…っ、わたくし自身を抑え込んでおります故、うぅ…っ、大丈夫でございます。」
話しながら、時折前屈みになるダミアン。
抑え込んで、か。確かにな。コイツの場合、調教…教育が必要だから仕方ない。
「力を抜くなよ?」
「はっ。畏まりました。」
俺の確認に、元気良く答えるダミアン。
「よし。食事が終わったら、お前の執務室に行く。政務を取りまとめているんだろ?」
魔王記憶にあったが、ダミアンが仮宰相としての仕事を主に行っているらしい。
という事は、一番次期宰相に近いと言える。
「はいっ。お待ちしております。」
そして深々と頭を下げ、ダミアンは食堂を退室していった。
しかし…、あの見た目でファンはたくさんいるだろうに、下半身を固めてるとかって…有り得んよな。
この場にいる女性型魔族に、真意を聞いてみたいもんだ。