3.魔王の補佐は誰ですか─7
「あぁっ!ミカエラ、魔王様に近付き過ぎですっ。」
コンラートと言い合っていたダミアンが、ミカエラの行動に気付いて叫ぶ。
距離感を告げられて視線を落とせば、それはそれは豊満な胸元が見えた。
グハッ…、大ダメージ。
驚いた俺は勢い良く仰け反り、そして思い切り後頭部を背凭れに強打したのだった。
いや、俺も男だし?金髪ゴージャスお姉様の胸元をこんな間近で見て、何とも思わない訳ないだろ。
けど、それはそれ。ダミアンみたいに、ところ構わず発情はしないの、俺。
「大丈夫~、蒼真ぁ。」
歯を食い縛って両手で頭を抱える俺に、ミカエラは何故か更に身体を寄せてくる。
いやいや、本当に近いって。
「大丈夫だから…、少し離れてくれ。」
「そうですよっ、ミカエラ。だいたい、魔王様に対する言葉遣いがなってませんっ。」
片手で制する俺の言葉に便乗して、ダミアンが身体を割り入れながら、ミカエラに注意をした。
今度はダミアンが近い。
「お前等、初期位置に戻れ。」
玉座に集まる銀髪と金髪に警告する。
「はっ。申し訳ございません、魔王様。」
「はぁ~い。わっちも戻るわよぉ。」
「全くもって、距離感を正しく把握していない者達ですな。」
「あたしはちゃんとここにいた。」
「俺も動いてないしぃ。だいたい、何でそんな人族の…。」
様々な言い分が飛び交う中、相変わらずフランツだけは敵意を納めていなかった。
「インゴフ。この中から次期宰相候補を選ばなかったら、どうなるんだ?」
俺は溜め息を押し殺しつつ、傍に立つインゴフを見上げる。
これ等の次期宰相候補達を選んだのは、他でもないインゴフなのだ。
「彼等が現在、魔族の上位である事は、事実。それに、魔王様との連結も、既に整っております故、変更は認められませんな。」
断言し、蛇頭を上下に揺すっている。
一人で納得して頷いてんじゃねぇっての。
「拒否権は。」
「ございません。魔王様を選出するのも、魔法士。次期宰相候補も、同じく。そもそも、我々魔法士がいなければ、認証の儀を行う事も、魔王様との連結を確立させる事も、出来ませんからの。誰か一人を決めるのは、魔王様ですがな。」
問い掛けも即、否定だ。
ってか、魔法士最強じゃねぇかよっ。
「…あ、そう。」
呆れて、それ以上何も言えない。
もう、どうにでもなれと叫びたくなるだろ。…やらないけど。
こうも周りの思うがままになるのが、非常に癪に障る。
この世界、絶対に変えてやるっ。