3.魔王の補佐は誰ですか─4
「魔王様、お初にお目に掛かります。私はコンラート。次期宰相候補に名を連ねております、コンラート・ルティン・ケルナと申します。夜分遅く申し訳ございませぬが、入室の許可を下さいませぬか。」
低い良い声で、茶髪筋肉のコンラートが、部屋の外に立っていた。
いや、正しくは廊下であるが…何というか、壁をぶち壊したらダメだろ。
俺は扉の横に大穴の開いた壁を見て、ガックリと肩を落としそうになった。
そもそも、ここにも結界があった筈である。
「…うん、そうだな。コンラートは良いよ。何ていうか、意味がなさそうだから。」
「はっ。有り難き幸せ、痛み入ります。」
呆れ果ててではあるが、項垂れながらも許可すると、至極丁寧な物腰で頭を下げるコンラート。
顔の横にある大きな巻き角が、いっそう堅物感を出している。
そして再び顔を上げると、真っ直ぐ俺に視線を向けながら、ゆっくりと部屋に入ってきた。
デカいな、マジで。ダミアンより、頭一つ分はサイズアップだろ。
俺は間近に立ち止まったコンラートの顔を見上げながらも、その50センチ以上の身長差に、もはや溜め息すら出なかった。
「この度無事に認証の儀を経て、魔王様になられました事、おめでとうございます。」
「あ、あぁ…ありがとう?」
大きな身体を折り、俺の前に片膝をついたコンラートから、堅苦しい言葉で祝われた…と思う。
良く分からず、礼が疑問系になったがな。
「我々次期宰相候補は、魔王様にお祝いの言葉を述べると共に、ご尊顔を拝し…。」
「ちょっと待て。あのさ…堅苦しすぎて、言ってる事が良く分かんねぇの。もう少し崩して話してくれる?」
コンラートの言葉を遮り、俺は片手を額に当てながら告げる。
本当に、頭の中で通訳が必要だっての。
「はっ…、では。魔王様へ初顔合わせと、ご挨拶に伺ったのでございます。この様なお時間に申し訳ございませぬ。」
「あ~…うん、分かった。時間が遅くなったのは、各々が人族討伐に出てたからだって分かってるから、問題ないよ。…ってか、ダミアンっ。んなとこで泣いてんな!」
少しだけ口調を和らげてくれたコンラートの話を聞いていたのだが、その背後で号泣しているダミアンが視界に入った。
服の袖口を顔に当てているが、意味がない程の水分量である。
感動?それとも嫉妬?
本当にコイツの頭の中は、どうなってるんだよ。
「コンラート、卑怯だよ。一人だけ魔王様に挨拶するなんて、ズルいっ。でも、あたしが一番に挨拶するつもりだったなんて、お、思ってなかったんだからねっ。」
甲高い声でアルフォシーナが喚く。
ん?ツンデレか?
「わっちだってぇ、一番に魔王様のお手付きになりたかったのにぃ。」
ミカエラは艶っぽく言いながら、上目遣いだ。
いやいや、お手付きって何だよ。そもそも、俺は誰にも何もしてないぞっ!?