3.魔王の補佐は誰ですか─3
「ちょっとアンタ!何やってんのよっ。」
その時突然、甲高い声が響く。
振り返って窓の外を見ると、青い髪の活発ショートカットの女性が、フランツに食って掛かっていた。
あ…魔王の記憶的に、あれも次期宰相候補の一人─アルフォシーナだな。
「こんな時間に魔王様直撃だなんて、バッカじゃないのっ?」
キャンキャンとうるさいが、正論だ。
俺もそう思うぞ。
「うるさいなぁ、アルは~。俺が来たいって思った時に来て、何が悪いんだよぉ。」
「それが悪いって言ってんのっ。」
全く反省の欠片も感じないフランツに、アルフォシーナが腰に手を当てて怒っている。
あ…、腰に小さな翼があるや。鴉的な、真っ黒な羽根。パタパタ羽ばたいているが、あれで飛んでいるのか。
「うるさいわよぉ、アルフォシーナちゃん。」
今度は、やけに艶っぽい声。
視線を向けると、赤髪フランツと青髪アルフォシーナの後ろに、金髪ウェーブのゴージャスお姉さまがいた。
客の多い日だな、おい。またまた次期宰相候補─ミカエラ─登場か?
「ミカエラ!あたしの事、ちゃんって呼ばないでよねっ。」
「あらぁ~、良いじゃないのぉ。ねぇ、フランツちゃん?」
アルフォシーナが標的を替えて金髪ミカエラに食って掛かるも、プラプラと掌を振って流されている。
ってかあんまり近付き過ぎると、アルフォシーナの額の一本角が、ミカエラに刺さるんじゃね?
「ミカエラ~、俺までちゃん付けか~い?」
「うふふふふっ、可愛いでしょぉ?」
苦笑いのフランツにも、ミカエラは婀娜っぽい仕草で身体をくねらせていた。
「あのさ~…アンタ等、俺の事を忘れてない?」
とりあえず、窓の外の珍客達に対し、俺は自分アピール。
そもそも、夜分に失礼しますって言う、丁重な扱いはされないのか?
「あ~ん、アナタが魔王様ね~っ。ん~っ、今度の魔王様ってば、黒髪の素敵な、お、か、たっ。」
艶っぽく、ミカエラが腰をくねらせて窓に近付いてくる。
魔王記憶で、身体に巻き付けられた半透明の羽衣は、飛ぶ為の物だと分かった。
ってか、身体の線を強調するように巻かれてるんだけどっ?しかもその垂れたウサミミみたいなの、角だよね?
「それ以上近付くな、ミカエラ。」
野太い声が後ろから聞こえる。
ったく、今度はっ?
望んでもいない来客を迎える側としては、とても歓迎出来る気分ではないのだ。
勢い良く振り返り、その後、内心で大きく溜め息をつく事になる。
いったい今日はもう、どうなってるんだよっ。ってか、そもそも魔王になったのも今日じゃね?
学校の帰宅途中からこっち、俺が目覚めて一日経ってないよな。
事故の記憶の後少し途切れてるけど、気付いたら空から落ちて変態ダミアンに拾われ。毛むくじゃら蛇のインゴフに魔王にされ、漸く日が暮れたかと思ったら、夜にはこれ?
厄日だ。俺の平穏な高校生活を返せよ~っ。