3.魔王の補佐は誰ですか─2
魔族だろうが何だろうが、王に対し、火急の用事でもなければ不敬だろ。
「俺が魔王だと分かっていてその態度とは、躾のしがいがあるな。」
目が慣れてきた事もあり、フランツの姿がハッキリと見えるようになった。
「えぇ~っ。俺、躾されちゃうの~?それってさ、どんな風に?エロい?」
呆れたように言い捨てると、フランツは楽しそうに聞いてきた。
長い髪は全体的にウェーブが掛かっていて、角はないが、口許には立派な犬歯が見える。
吸血鬼って感じだな。
ってか、何でエロいか聞くんだ?
「馬鹿か。」
「えぇ~っ、良いじゃん。エロいの、好きだろ~?人族なんて、しょっちゅうヤってんじゃん。」
ジト目を向けると、自分の意見を言い連ねる。
ったく、これは人族に対する偏見か?
そもそも繁殖期が特別決まっている訳でないのだから、種族的相違だろ。
「フランツが何を期待しているかは知りたくもないが、それを俺に押し付けるな。」
アホらしいとばかりに片手を振るい、俺は室内に身体を向けた。
「ちょっと待ってよぉ~っ。せっかく来たんだからさぁ?とりあえず、俺と遊ぼうよっ。」
俺の拒絶にめげる事なく、フランツは尚も言い募る。
馬鹿なのか、根気があるのか不明だ。
だがそれでも、このまま付き合う事は出来ない。
「お前と遊ぶ気はない。そもそも、北の討伐指揮はどうなっている。」
ハッキリと言葉にし、尚且つ責任を問う。
確か魔王の記憶でフランツは、北側の人族討伐の指揮を任されている筈だった。
「えぇ~っ。ちゃんとやってるよぉ、俺。今は新しく魔王様になったっていう奴の顔を見に来たんじゃん。けど、まさかこんなチビッ子とは思わなかったけどな~っ。アハハっ。」
にやけた顔で話し、最後には堪えきれなくなったのか、本当に笑い出す。
いかん…落ち着け、俺。そもそもコイツが入ってこないのは、俺が認めていないからだ。
魔王の私室だけあって、オープンに見える窓には強力な結界が張ってある。いくら力ある魔族といえども、俺の許可なく入室は出来ない。
第一、廊下にいるダミアンが、何もなく入ってこない筈はないのだ。
「勝手を言ってるなよ?」
「何さぁ~。ヤる気になったぁ?だいたいさぁ、元々人族なんだろ?ちょっと味見させてくれない?」
俺の睨みは効かないようで、更なる不敬発言である。
おいおい、大丈夫か?魔族。
こんなんで本当に、魔王をトップとして纏まるのかよ。
「なぁ、なぁ~っ。聞いてんのぉ?」
返答をしない俺に焦れたのか、フランツは催促してきた。
それでも必要以上に窓に近付かない。見た目程、阿呆ではないのだろう。
だが、どうすれば良いか。一度叩きのめしておくべきか?