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召喚魔王の俺  作者: まひる
第4章
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幕間──コンラートの出向

 ◆ ◆ ◆


「コンラート様っ。後続の一団にかなりの遅れが出ておりますっ。」

「またか……。」

 後ろから部隊の長を任せているゲカクンドが声をあげた。それに対し、分かりやすい程の不満げな表情を浮かべるコンラートである。

 今進行しているここは元人族北の国、現在は神力の暴発による荒野となっている場所だ。

 辺りの草も木も枯れ、あった筈の建物は瓦礫と化して大地に(なか)ば埋もれている。


「何でこうも足が遅いのだ。お前達は魔族の精鋭ではないのか。」

「仕方がないですよ、コンラート様。後続の一団は魔族と魔物の複合騎馬隊ですから、魔物達の体調が(かんば)しくないのでしょう。」

 苛立ちのままに声を(あら)らげるコンラートに、(そば)にいたニコラが静かに告げた。

 (いま)だ強い神力が漂うこの地は、これを生み出した人族でさえ長居が出来ない。だからこそ捨てられたのだが、強い生命力を(ゆう)する魔族はその対象ではなかった。

「魔族の中でも、僕のような獣人族にはキツイです。空気が薄いというか、息がしづらいですから。」

「ふむ、そうなのか?」

 コンラートは魔族の中でも上位種である鬼族である為、神力核の(そば)でこそ圧迫感があった程度である。

 つまり魔族の中でも個の強さにより、神力耐性に違いが現れていた。


「そうですよ、コンラート様。でもそれ(ゆえ)に、この地が魔道具の研究に適しているのでしょうから世の中不思議ですよね。それに僕は、魔道具の為なら多少の不都合など気にしません。」

「うむ、それは私も同じだな。ではこの魔道具を試させるか。」

 コンラートとニコラは魔王城で日々魔道具に明け暮れている為、この地への引っ越しもそれが為なのである。

 魔王である蒼真とリミドラの婚儀が終わるのを待って北の地(この地)(おもむ)いた為、更なる魔道具製作時間は思った以上にあったのだ。

 ニヤリと二人で笑みを向け合う。これまで試作試行役は魔王が(にな)っていたのだが、ここまで都度呼び出す訳にもいかなかった。つまりは別に体験するモルモット的存在が必要である。勿論、感想を伝えられる頭脳を持っていた方が理想的だ。


「な、何をなさるおつもりですか?」

 コンラートとニコラの話を聞いていたゲカクンドが、不吉にも思える二人のやり取りに後退りする。

 不穏な空気を察したからに他ならず、魔王が試作試行役を任される前は、当たり前のようにその対象は部下だったのだ。

「なに、(たい)した事ではない。」

「そうですよ、そんなに警戒しないでくださいよ。」

 決して安心出来ない(たぐ)いの笑みを二人に向けられ、ゲカクンドは顔がひきつる。

 彼の姿は牡牛をベースとした鬼族なのだが、恐怖に顔を(ゆが)める(さま)は人族と変わらなかった。

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