6.魔王と並び立つもの─6
「ところで魔王様。」
その後も細々とした報告があったが、一息ついたとこで突然ダミアンの畏まった声が掛けられる。
「何だ。急に改まって。」
俺が問い掛けた事で、他の四魔将軍達の視線がダミアンに集まった。
「婚姻の儀はいつ執り行いますか。」
「ぶっ。」
突然の話に、俺は思わず吹き出してしまう。
──いや待て、婚約はしているのだから当たり前なんだけどっ。
「もう婚約の儀を執り行ってから半年程経ちますが、正式に日取りを決めて準備に取り掛からなくては期を逃してしまいます。」
「えっ……何が……。」
ダミアンの言葉に疑問符が浮かぶが、すぐさま魔王知識がそれを補ってくれた。
つまりは獣人族犬種は繁殖期があり、尚且つ寿命も短い。それ故に二世を望むのならば早く仕込めという、なかなかに衝撃的な内容だった。
「……マジか。」
即座に返答が出来ず、俺はその場で固まる。
魔族は種族によってかなり寿命に差があった。鬼族や竜族が強い力を持っているのは長命種故であり、対して獣人族や亜族は極端に短命なのである。
それでも人族に比べれば獣人族は長命な種もあり、その辺りは様々だった。
「ダミアンちゃん、もっと分かりやすく言わなきゃダメよぉ。蒼真ぁ、心配しないでねぇ?リミドラちゃんと交配すれば、魔王様の魔力が彼女にも挿入されるんだからぁ。」
ミカエラの言葉に、別の意味で硬直する俺。
しかも物凄い事を返された気がする。
「全く、ミカエラはデリカシーがないよなぁ。愛を交わすとか、愛し合うとか言えないのかねぇ。入れるとか交わるとか、エロ過ぎぃ。」
「フランツ。発想が卑猥。ミカエラはそこまで言ってない。」
「えぇっ、アルはここで俺を責めるっ?!」
ギャアギャアとフランツとアルフォシーナのじゃれ合いが始まった。
その間に再起動を完了した俺は、ミカエラの言葉を魔王知識で検索をする。
確かに寿命が短い種族も長命種を伴侶とした場合、強い方の魔力影響でかなり延命するようだ。その条件が『仲睦まじい事』だというのならば、ミカエラの告げた内容が単なる憶測ではないのだと推測される。
「分かった。婚儀までどの程度みれば良いのか、ダミアンに任せる。リミドラには俺から告げるから、詳細が分かったら教えてくれ。」
「は。畏まりました、魔王様。」
「他には何もないな。……解散。」
「「「「「はっ。」」」」」
そして俺は、全員に確認してから解散を告げた。
だが玉座の間から自室に戻った途端、一気に熱くなった顔と耳を押さえてしゃがみこむ。
──色々と恥ずかし過ぎるだろっ。
残念ながら、俺はそういった類いの話に弱かったのだ。




