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召喚魔王の俺  作者: まひる
第4章
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6.魔王と並び立つもの─5


「それが人族の国との和平の条件か。」

「はい、魔王様。北の人族の国は事実上の崩壊となりました。()の国の中央部は(いま)だ神力の気配が色濃く、作物並びに魔物の生存可能地域ではありません。」

 魔王城の謁見の()で、俺はダミアンからこれまでの報告に耳を傾けている。

 ここに戻ってきてから半月あまりだが、優秀な宰相は俺から何も指示がなくとも、人族との和平交渉を進めていたのだ。

 細かくは四魔将軍と隼人で打ち合わせを(おこな)ったようである。ちなみに俺は、例の(ごと)く闇魔力で引きこもり回復をしていたとの事だ。──使えなさすぎる、俺。


 話を戻すが、どうやら神力が強すぎると色々支障があるらしく──魔物が寄り付かないのは分かるが、通常の作物も生育出来ないらしかった。つまりは現状、人が住めない地域になっている。


「それで、魔族側に国の四分の一譲渡願いとはな。代わりに北の地域をもらったところで、植物が育たないんだろ?」

「失礼ながら、魔王様。生産地域としての価値が皆無であろうとも、神力の気配が濃厚な場所は魔道具実験の絶好の地かと愚考致しまする。」

 北の地を拒絶しようとしていた俺に、珍しくコンラートが間に入ってきた。

 コイツはニコラ・アデルをつけてから、前以上に魔道具バカになっている。

「コンラート。お前なら上手く使えると?」

「は。人も魔物も住まぬ土地なれば、実験によって多少破壊しても差し障りない事でしょう。(いま)だ銀の粉への完全な対応策がない為、早急(さっきゅう)に製作せねばならぬ事案でありますれば。私としては研究所をそちらに移してでも、対神力魔道具の実験は(おこな)うべきかと存じまする。」

 玉座の前に片膝をついて四魔将軍達がいるのだが、他の三人は口を開かなかった。


「フランツ。お前はどうだ?」

 俺はコンラートの隣にいる赤髪ウエーブに問い掛ける。

「魔王様~。俺は嫌だよ、そんな面倒な土地なんてぇ。魔物が居付けないって事は、戦闘訓練すら出来ないじゃんよぉ。(いく)ら広い土地でも、俺の軍には必要ないな~。」

 相変わらず高めのトーンで即拒絶の姿勢だ。

 しかしながら筋肉マッチョのコンラートと並んでいる分、チャラそうなフランツの態度に違和感はなかった。


「フランツ、面倒言わない。」

「何だよぉ、アル。お前ならもらうって言うのか~?」

「あたしはいらない。」

 アルフォシーナのツッコミに食って掛かるフランツだが、その口調はやけに親しげである。

 吸血種と鴉天狗種ではあるが、魔王知識によると、二人は幼なじみともいえる接点があったようだ。

 そもそも次期宰相候補者達は幼少の頃から幾度も顔を合わせる事があり、年齢の近いフランツとアルフォシーナは更に他の面々より近しい存在だったようである。


「良いじゃないのよぉ、蒼真ぁ。コンラートちゃんが欲しいって言ってるんだしぃ?わっちも否やはないからぁ、彼にあげちゃって~。」

 その更に横から金髪お色気ムンムンなミカエラが、何故か(しな)を作りながら告げた。

 この婀娜(あだ)っぽい姉ちゃんは誰にでも『ちゃん付け』をするが、対象が筋肉ダルマでも変わらないらしい。

「わたくしも()でございます、魔王様。」

 最後に俺の左側に立つダミアンが許可した事で、全員の賛成が取れた。

 これで俺が止める理由もない。

「分かった。ではコンラート、お前に一任する。ニコラ・アデルにはちゃんと報告書を出させろよ。」

「畏まりて御座いまする。有り難き幸せ。誠心誠意、勤めさせて頂きまする。」

 元より体勢が低い状態ではあるが、それ以上に(こうべ)を垂れるコンラートだった。

 ──いや、もうそれ以上下げると床についちゃうから。

 俺の内心はよそに、そんな感じで当面の方針は決まった。


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