6.魔王と並び立つもの─1
目を開けていられない程の激しい光と、身体に伝わる空気の震えがどれくらい続いたのか。漸く静かになったと気付き、俺は瓦礫の中から起き上がった。
いつの間に倒れたのか、それすらも記憶にない。それどころか周囲を見回し、あまりの景色の違いに唖然となった。
『……、……様っ。』
動くものはないかと周辺を観察していると、酷く聞き取りにくい念話らしき音に意識が向く。
『あ?』
年寄りかそれ系の職業人並みに顔をしかめて問い掛けた。
そもそも全く周囲の音が聞こえないのは、現時点で俺の鼓膜が死んでいるからだろう。風の音も、自分の瓦礫を蹴散らす音すらないのだ。
『魔王様っ。御無事で何よりです。』
『あぁ、ダミアンか。まぁ無事と言えるかは不明だが、とりあえず生きてはいるな。』
漸く聞こえたダミアンの声に、俺は実際には相手に見えないだろうが首を竦める。
『とにかく説明は後だ。お前達を先に出すからな。』
今の状況を口で説明するのは難しく、俺自身でもまだ把握出来ていない為に問題を棚上げした。
未だ隼人の姿も確認が出来ていない。更に俺の魔力残量はほぼ空だ。
『『『『『はっ。』』』』』
全員からの返答を受け、俺は闇魔力に包まれた亜空間を意識する。
彼等を格納したのは無意識であったが、脱出させるのも全く問題なく行えた。さすがというべき魔王能力である。
俺の前に勢揃いし跪く五人に、軽く片手を上げて見せた。
しかしながら当然というか、彼等が口々に喚いている内容が聞こえない。
『あ~……悪いが、今は音が聞こえないんだ。話すなら念話でしてくれるか?』
そう言った途端、ギャイギャイと五人それぞれが念話で訴え掛けてきた。
勿論キャパオーバーなので、頭痛を引き起こしただけである。
『……申し訳ございませぬ、魔王様。』
俺が頭を抱えた事に真っ先に気付いたコンラートが、他の四人を制して静かに謝罪してきた。
苦痛に閉じていた目を開いて見れば、四人が同じく頭頂部を抱えている。どうやら状況的に、コンラートの鉄拳制裁がはいったものと思われた。
『あぁ、許そう。それより、近くに神力の化身がいないか探ってくれないか。』
『畏まり申した。』
音が聞こえない今の俺では、この瓦礫の山から隼人を捜索出来ない。
同時に魔力切れの為、探索魔法すら発動出来なかった。──これは実質役立たずである。
そしてコンラートが四人に指示を出している風景を見ながら、俺はぼんやりと魔力の回復に努めていた。
そもそも魔力で肉体を形成している魔族は、回復魔法というものがない。魔力を使って肉体を再生させたりするのだから、己の持つ存在値が全てなのだ。




