5.魔王は暴走してはいけません─10
『今から神力核を破壊する。お前達は暫くその空間にいろ。』
俺はダミアンや四魔将軍達に告げる。
既に魔王知識から彼が現在いる場所を把握している為、そこが一番安全なのだという事も分かっていた。
『なりません、魔王様。』
『却下だ。神力核を壊せば、膨大な力が放出される。今の俺ではお前達まで守ってやれないんだ。』
予想通り直ぐ様否やを返してきたダミアンに、用意していた言葉を告げる。
四魔将軍達も分かっている筈だ。だからこそ、自分達の生命力ともいえる魔核の魔力を使って神力核を抑えていたのだから。
それくらいして何とか押さえ付けていた神力である。だが、それでも完全には御し切れなかった。
『あたしが魔王様を守る。』
『わっちだってぇ。』
『仕方がないから、俺も参加させてもらうぜ。』
『うむ。私も同じくである。』
『わたくし達の全員の意向でございます、魔王様。』
口々に、全員が揃って同意見ときた。──だから人の話を聞けっての。
俺は大きく息を吐き出し──念話には必要ないのだが─、再び目一杯息を吸い込んだ。
『だからそこから力だけ寄越せ。……俺を守れ。』
力強く言い放つ。
正直、残量を殆ど注ぎ込むくらいでないとあれを壊すのは難しかった。
前回の肉風船であった時ですら、あれだけ力を使って表層を撫でた程度である。現在の純度の高まった神力核の強度は、それこそ推して知るべしだ。
『ま、魔王様。』
『うっせぇ、半分以上隼人の方に使ってんだよ。残りぶつけて壊せるかどうかってところなんだ。だからお前等には俺を守らせてやんよ。』
ダミアンの焦ったような声も何のそのである。
ちなみに彼等がいる亜空間は闇魔力で出来ているのだ。つまりは俺が死ねば一網打尽だったりする。あ、元より連結してるから同じだった。──生死は核に関連付けされているからな。
『って事で、頼むぜ皆。』
『『『『『はっ!』』』』』
かなり強引なのは分かっているが、隼人側の抵抗も激しく悠長に長話をしている場合ではなかった。
俺は自身の守りをダミアン達に任せ、持てる全ての力を己の前に集める。視界の端に神力の化身を包み込んだ黒い球体が見えるが、内側からの圧にボコボコと奇妙な凹凸を浮かび上がらせる様子に焦りを隠せなかった。
欠乏していく魔力のせいか、時折暴走しそうになる魔王を理性だけで抑えつけ行う。
全力で百メートル走ったかのように、心臓が──実際には魔核なのだが──おかしな痛みを訴えていた。
そして俺の目の前に、ビーチボール大の白銀の光球が出来上がる。黒くないのは闇魔力だけではなく、俺の持つ全ての魔力を注いでいるからだ。
「打ち砕け。」
俺はビームのイメージでそれを放出する。
戦闘ロボットや宇宙を走る戦艦のように──その白銀の光球から真っ直ぐに金色の神力核へ延びていく線が走った。




