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召喚魔王の俺  作者: まひる
第4章
234/248

5.魔王は暴走してはいけません─8


「何を期待していたのかは知らねぇが、俺は俺のやりたいようにやる。土槍(グラウンドスピア)。」

 言い放ちながら土魔力で槍を形成し、隼人(神力の化身)の足元から突き上げるように先制攻撃を繰り出した。

 だが隼人(神力の化身)もその程度の魔法(など)効果がないとばかりに、ひらりと上空へ身を(ひるがえ)す。

氷槍(アイススピア)。」

 そして俺も上空へ回避される事を見込んでいた為、用意していた氷の槍で前後左右から狙い撃った。

 しかしながらそれすらも隼人(神力の化身)の身体を(かす)めもしない。奴はその背の翼を大きく羽ばたかせる事で、俺の放った氷の槍を全て弾き落としたのだ。


「へぇ、やるじゃん。さっきまでの動きと全然違うねぇ。良いよぉ、もっとだよぉ。もっと楽しませてよぉっ。」

 隼人の顔に醜悪な笑みを浮かべた神力の化身は、その手に持っていた聖剣を振り上げて幾度か素振りをする。

「……楽しみたいなら、その身体から出ろよ。そうしたら百パーセントの力で相手してやんよ。」

 俺としては隼人を傷付けたくないのだ。こんな(あお)り文句くらいで隼人を手放してくれるなら最高だ。

 闇魔力の剣先を下ろしたままの俺に、神力の化身は顎を突き出して不満顔を(さら)す。


「何だよぉ、いけずぅ。そんな事言ったって無理なものは無理ぃ~。肉体がなければ戦えません~っだぁ。」

 更には舌を出して言い返してきた。

 肉体がなければ──という事は、これの正体は力の塊か精神体となる。そもそも戦闘にすら意味がないのではと思ってしまった。

「あぁ、急に殺気が()えたんだけどぉ。」

「……あの神力核を砕けば消えるか?」

 気配に(さと)いのか、俺の戦闘意欲を的確に当ててくる。


 これは俺が分かりやすいだけなのか──ともかく標的を変えるべきかと、視線だけで前方にある金色に輝く神力核を見た。

「あ~っとぉ、その核を壊したら大爆発だからねぇ?」

 にこにこと笑顔で告げられても、それが嘘か(まこと)かは判断がつかない。

 それに、俺に至っては現状で守るべき存在は隼人と己だけだ。ダミアンや四魔将軍達は既に俺に取り込まれていて、意識を集中すれば彼等の魔核を感じ取る事が出来る。──良かった、吸収分解とかされてたら発狂しそうだし。


「別に良いんじゃね?ここは人間の国だし、ボンといっても魔国まで距離があるからな。そもそも神力は人間が集めたものだから、暴発しようが()き消えようが俺の知った事じゃない。」

「嘘ぉ、そうくるぅ?折角ここまで集めさせたのにぃ。」

 俺の開き直りに、逆に動揺を見せる神力の化身だ。

 更には『神力を集めさせた』とも告げている。──ならばこの存在は何なのかという、当初の疑問に戻ってしまった。

 俺の知る『神力』とは力の名称であり、それ自体が一個の思考を持つものとは考えられない。


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