4.魔王の突撃訪問です─8
人族の男の案内でとち狂った国王のいる場所へ向かう俺だが、既に案内が必要でない程に神力の威圧感が周囲に増している事を気付いた。
そして俺達と逆行するように、向かう先から様々な性別年齢の人族が駆けてくる。いや──これでも避難をしているようだ。
「俺達の事は完全スルーだな。」
「そ、そうですね。実は私も逃げ出したい気持ちでいっぱいなんですが。」
男は額から冷や汗を垂らしながら、青白い横顔を晒している。
国王に反逆の意を示しているから故の反応なのか、前方から感じられる強力な神力のせいかは不明だ。それでも歩みを止める事なく前に進んでいるので、間違いなくこの男は精神力が強い。──さっき誉めようとしたのを忘れていた。しかしながら、この男の精神力をもってしても抗いきれない制約に嫌悪感を感じる。
しかも前方から漂ってくるのは神力のくせに、何故か背筋を襲う寒気がするのは俺が魔王であるからなのかという考えが過った。──仮にそうであったとしても、この場から尻尾を巻いて立ち去るなど有り得ないのだがな。
「おい。もう方向は分かる。道案内なしでも壁をぶち破っていけない事もないぞ。」
「か、勘弁してください魔王様。あの状態の国王が暴れたらこの城なんて跡形もないでしょうが、我々にしてみれば大切な守るべき象徴なのです。自分からどうぞ壊してくださいとは、口が裂けても言えません。」
俺の親切とは言いがたい提案に、眉を盛大に下げての困惑の表情を見せられた。
勿論言っている意味は分かるので、俺もこのまま強行手段に出ようとは思わない。だが基本的に城の内部は迷路のように入り組んでいるのだ。
方向が分かるとはいえ、右や左と何度も角を曲がる面倒に若干どころかかなり苛ついてくる。断然真っ直ぐ行けば早いのだ。
『ミカエラ。報告をしろ。』
『あ~ん、蒼真ぁ。今はねぇ、ブヨが更に膨らんで部屋が風船なのぉ。』
気を紛らわそうと男の後を走りながら念話を飛ばせば、問い掛けた先のミカエラから全く意味の分からない言葉が返って来る。
──ダメだ。しかも何故そんなにも楽しそうなのか理解が出来ない。
『コンラート。そっちはどうなってる。』
『ふぬ。………………今はゆとりがない故………………後にしてもらえぬだろうか、魔王様。』
仕方なしに直接対峙しているであろうコンラートに念話で呼び掛けた。がしかし、まともに会話が成り立ちそうな奴には速攻で断られる。
──おかしい。何故、魔王である俺への対応が皆してこれなんだ。
『魔王様?』
『……リミドラ。あれ?俺、 呼んだか?』
直属の部下からの対応に苛立ちを感じていた俺に、この場にはいないリミドラからの念話が届く。
彼女は魔王城に待機しているので、こちら側の状況は把握出来ない筈なのだ。──いや、俺の渡した黒蝶があるか。
俺の闇魔力で構成されている黒蝶は、ダミアンが言うに俺の分身らしい。もしかして俺の苛立ちを感じたのかもと思った。




