4.魔王の突撃訪問です─5
「ミカエラ。先程の聖職者を捜せ。アルフォシーナはミカエラと念話連絡を取りながら、聖職者をここにつれてこい。フランツ、コンラートは隼人の指示を受けて神力核のところだ。ダミアンは隼人とフランツ達の連絡係をしろ。分かったら行けっ!」
「「「「「はっ!!」」」」」
俺の声にそれそれが了承の意を示して散る。
くそっ、馬鹿にしているにも程があるだろ。こっちは善意の集団じゃないんだ。
怒りに任せて拳を振り下ろすと、俺の足元の石造りの床が砕ける。だがそれだけでは怒りが収まらず腕を軽く振るった事で、隼人が焦がした玉座の周辺を壁ごと吹き飛ばしてしまった。
「蒼真?」
「……あぁ。」
隼人に声を掛けられ、大きく深呼吸をしてから答える。
だがその自分の返答すら、完全に苛立ちを消せれてはいなかった。
「大丈夫?蒼真。」
「ふぅ……。いや、結構頭に来てる。」
再度心配そうに隼人から肩に手を置かれ、俺は息を吐き出して真情を吐露する。
「うん。」
「少し風に当たって来るから、隼人はダミアンに協力してやってくれ。」
「分かった。」
俺はこれ以上無様な自分を曝したくなかった為、背中に闇魔力を翼に変えて装備し、テラスから飛び立った。
一瞬悲しげな隼人の表情が見えたが、感情を暴走させてしまっては仲間の存在すら危うくなってしまう。それほどに、今の俺は大きな爆弾を抱えていた。
テラスから飛び出し、城の上空に浮かぶ。そのまま己の内に込めた闇魔力を一気に放出した。
これは鬱憤を晴らす要領でやってみただけである。大声を出す訳にもいかない為だが、内心では『王様の耳はロバの耳~っ』と叫んでいる気分だった。
その解放された魔力によって、自分を中心に周囲が闇に覆われる。でもこれは恐怖ではなく、俺にとっての安らげる空間だった。
「はぁ……はぁ……はぁ……。」
肩で息を吐き、額に拳を当てる。ここで初めて自分の手が震えているという事実に気付いた。
「なかなかないよな、怒りに震えるっての。はぁ~……、ちょっと反省。魔王の怒り、ぱねぇな。俺の感情だけじゃなく、『魔王』に引き摺られそうになった。」
意識的に呼吸を緩やかにさせ、自分の魔力をコントロールする。
大きな力はそれだけで暴発する危険も孕んでいるのだと突き付けられた感じだ。
『蒼真。大丈夫?何か空が暗いんだけど。』
落ち着いたところで、隼人からの念話に気付く。
『あ?空が暗いって、どういう事だよ。』
まだ昼頃の筈なので、暗いという表現には適さない時間だった。
『魔王様。お話中申し訳ございませんが、この辺り一帯を闇魔力が覆ってしまっているようです。』
『え……、マジか。』
状況が分からない隼人と俺に、ダミアンからの念話が入る。
どうやら俺の周囲だけではなく、かなり広範囲で魔力を放出してしまったようだ。
マジ、魔王ぱねぇ。




