4.魔王の突撃訪問です─4
その後、ヘコヘコしながら退室した聖職者と強制的につれていかれた国王を待つ俺達だ。
「ねぇ、蒼真。あの椅子不衛生だから、消毒して良い?」
謁見の間らしき場所でそれぞれが待機している状態だったが、不意に隼人が声を上げる。
確かに玉座は国王が汚していったが、それなりに人族が清掃していったと思った。
「何がそんなに気になるのか分からんが、加減はしておけよ。」
「うん、大丈夫。ちょっと焼却するだけ。」
「は?」
多少呆れながらも許可を出した俺だったが、その直後に後悔する。
隼人は『焼却』と称して、玉座の辺り十メートルくらいを本当に燃やしてしまったのだ。こちらまでは距離があるので実質的な問題はなかったが、壁やら周囲の床まで黒焦げである。
「……怖いよな、あの短絡的考え方。」
「フランツちゃんも似たようなものじゃないのよぉ。」
「うむ。ミカエラの言うように、火の魔力をもつ者の気性かもしれぬな。しかしながら彼は一種類の魔力属性ではないようだが。」
「フランツ、単純。灰色、複雑。」
「おいこら、アル。誰が単純だ、ボケ。」
何やら四魔将軍達は楽しそうだ。
普段から共にいない為にあまり仲良しのイメージがないが、集まればうるさいほど口を開く。これを見ていると、逆にダミアンの方が大人しく思えるから不思議だ。
「貴方達は寄ればかしましいですね。魔王様。日の入りまではまだ時間がありますが、彼の様子がおかしいです。」
「ん?」
小さく溜め息を吐いたダミアンだったが、すぐに真面目な顔で俺に声を掛ける。
その示す先にいた『彼』とは隼人の事だったが、魔法を使った後から動きがなかった。何処かをボンヤリ見つめたまま、人形のように突っ立っている。
「隼人?」
「………………蒼真。神力核が活動を開始したっ。」
目の前で手を振りながら問い掛ければ、長い沈黙の後で急に両肩を掴まれた。
驚いてフリーズする俺だったが、隼人の言葉の意味を理解した途端に大声を上げてしまう。
「はあっ?何だって!」
俺の叫びに四魔将軍達も騒ぎ始めるが、今は構っていられなかった。
確か神力は隼人の魔核化の時、線が混線したような状態に陥っていた筈である。
「隼人。神力核は今、どの程度の補填率なんだ?」
「え、えっと……一度散開してしまったのか、今はまだ三割くらいかな。でもそれまで滞っていた祈りの力が、急に集まり出した感じだよ。」
焦った様子の隼人。彼が危機感を感じる程に、神力が強まっているのだろうと推測された。
あの人族は、我々の忠告を足蹴にしてくれたという訳である。全く、馬鹿な事をしてくれたものだ。




