4.魔王の突撃訪問です─2
「どうなっているんだ!何故一向に神力が集まらないっ。」
「も、申し訳御座いませんっ。目下鋭意調査中でありますっ。」
床に頭を擦り付ける程に頭を垂れる男。その目の前には豪奢な大振りの椅子に腰掛けている、華美な装いの太った男がいる。
「早く神力を集めて魔族どもにぶつけなくては、折角勇者を召喚したのに金が無駄ではないかっ。」
「いえ、召喚したのは我々聖職者なの……ではなくて。はい、国王様の仰る通りで御座いますっ。ですが、その勇者を召喚する際に使った神力核が原因かと……。」
「何をっ?!」
「ひっ!もももも申し訳御座いませんっ!」
ピリピリと怒りを隠そうともしない太った男──国王に向け、額を床につけたまま男──聖職者が告げた。
実は聖職者の間では当たり前となっている、『召喚勇者に植え付ける神力核は一つ』という常識を強引に覆させたのは国王である。
勿論誰しもが危険であると判断して躊躇したのだが、前例がない事を理由に押し切られたのだった。
「ふぅ~ん、アンタが諸悪の根源だったんだ。」
「あれが人族の王なのぉ?性根がちっぽけな男だわぁ?」
「無駄な肉……いや、あれは脂か。醜いのぉ。」
「汚い。魔王様、潰して良い?」
フランツとミカエラに続き、コンラートとアルフォシーナの暴言が声を潜める事なくホールに響き渡る。
たぶん玉座なのだろう豪奢な椅子に腰掛けた国王は、俺達を見て顎が外れたといって良い程に大口を開けていた。土下座状態の聖職者もしかり。
「まぁ、待て。俺は挽き肉を作りに来た訳じゃないからな。」
俺はゆっくりと歩きながら国王に向けてニヤリと笑みを浮かべる。
とりあえずテラスから浸入した俺達だが、ダミアンが鳥から人型に変化する暇まであった。つまり、誰も攻撃してこない。人族が統率の取れていない有象無象の集団であると証明された感じである。
「蒼真。あれ、僕がここに来た時に一番初めに出会った白服だよ。」
「ゆゆゆゆ勇者??なななな何で貴様がっ。いや、毛色が少し違うか……。しかもあれは魔王との戦いで死んだ筈……?」
「うるさい。少し黙ってろ。」
「あひ……っ。」
隼人の会話に思い切り被せるように国王が喚き、俺は苛立ちをそのまま魔力の威圧としてぶつけてしまった。結果、国王は玉座の座面を水浸しにして失神してしまう。
しまった。耐性の低い人族には効きすぎのようだ。──まぁ、仕方がない。
「国王様っ……。」
「まだ死んでない。ところでお前、聖職者か?そうだよな、さっき聞いてたし。」
腰が抜けたのか、その場から立ち上がる事もしない聖職者だ。そして俺の問い掛けの体をした言葉に必死に縦に首を振る。
国王の傍にいるという事は、コイツが聖職者のトップか。




