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召喚魔王の俺  作者: まひる
第4章
209/248

3.魔王に喧嘩を売ってはいけません─3


「俺に婚約者がいようといまいと、隼人が取り乱す理由はないよな?」

「あ……、うん。そうだよね、うん。」

 とりあえず落ち着いた隼人である。

「よし。改めて聞く。俺と隼人の関係は?」

「親友っ。無二(むに)の親友だっ。」

「……強化しなくて良いから。それと、そこでブツブツうるさいぞダミアン。」

 にこやかに断言する隼人に(わず)かに脱力しつつ、俺の斜め左後ろに立っているダミアンの呟きに突っ込んだ。

 コイツの変態度は嫌と言う程知っているが、立場はただの宰相である。嫁でも恋人でも、()してや愛人とか有り得ない。友でもないしな。


「お前は魔王である俺の宰相だよな?」

「はっ。魔王様より御選び頂いた喜びを忘れる事はありません。」

 問い掛ければ急に背筋を伸ばし、そして恍惚と頬を赤らめた。

 いや。お前以外宰相向きでなくて、もっと酷かったからだよ?──って言うのはやめたけど。

「それならいちいち周囲を牽制して業務に支障をきたすな。ドアルの件も隼人の件も、宰相としての範囲を逸脱してるだろ?」

「は……、はい。」

「分かったな?」

「はっ。」

 曖昧な返答は不要とばかりに俺は強く問う。そしてダミアンもそれに従い、ハッキリと答えた。

 本当に疲れる。


「魔王様。お茶をどうぞ。」

 ドアルがそう言って目の前に差し出した紅茶は、俺の気に入っているリンゴの甘い香りがするものだった。

「ありがとな、ドアル。」

「勿体無き御言葉、痛み入ります。」

 その香りにホッとしつつ、ドアルに笑みを返す。

 彼は当たり前のように頭を垂れるが、隼人とダミアンが呟いた。

「……何か複雑な気分?」

「わたくしもです。」

「隼人、ダミアン。分かってるよな?」

 自分の眷属が(いが)み合う事程愚かなものはない。

 俺は不穏な発言に威圧を持って問い掛け、強制的に二人に首肯させた。


 そもそもが王城に戻ってきたのは情報収集の為である。隼人とダミアンのおかしな衝突のせいで忘れがちだったが、人族との抗争をなるべく早く鎮静化させなくてはならないのだ。

「ダミアン。ニコラを呼べ。」

「はっ。」

 ダミアンに指示を出し、俺は空を睨む。

 とりあえずニコラを呼んで、魔道具で四魔将軍と情報を共有させなくてはならないのだ。しかしながら今彼等を呼び戻す事は避けたい。

 まだ人族の動きが読めない為、国境周辺の警護を(おろそ)かには出来なかった。


「蒼真。とりあえず休んだら?ずっと動きっぱなしじゃん。」

「あぁ。だがまだ休んでいる暇がない。早急に手を打たなくては、こちらが後手に回ってしまう。」

 俺の焦りに気付いているのか、隼人の気遣わしげな視線が痛い。

 でも悪いが俺は魔王だ。この国を守らなくてはならない。


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