2.魔王はカウンセラーではありません─8
「もしかして隼人、複数属性持ち?」
俺は彼の言葉から推測された事を問う。
魔族は魔力が全てだから、自分の属性は自分で把握出来るのだ。
「……うん。前は『神力』だっけ?あれはまた性質が違うんだけど、今の僕も属性限定ではないんだよね。」
「もしかして、『全』?」
限定されない力と言えば、俺の持つ魔力である。
つまりは全ての属性を使えるという事であり、魔法の種類に限定されないのだ。
「や……、そうではないみたい。えっと、こんな感じ。」
手探りといった感じではあったが、隼人は俺とダミアンに背を向けると次々魔法を使っていく。
光。火。風。雷。氷。水。土。
驚く事に、闇魔力以外の属性を有していた。
「さすが魔王様でございます。」
「いや、誉めるとこそこ?」
ダミアンは隼人の魔法属性に反発を見せる事なく、何故か俺を誉め始める。
「凄いな、魔族って。魔法を使っても、空気から自然補給される。お腹も空かなさそう。」
「隼人は誉めるとこそこなんだ。」
二人の言い分はそれぞれなんだが、もっと重要な事に気付いてほしかった。
『人族』で『勇者』の隼人が、『魔王』の力で『魔族』となって『黒持ち』になったんだよ?
正確には黒ではなく灰色なんだけど、これってこの世界では驚くべきことな筈だ。
だって、魔王以外に黒を纏っているのは鬼族鴉天狗種だけなのだから。しかも髪に黒系はいない。
濃い色でも紺色──つまりは青系統で、しかも隼人から感じる魔力値が半端ないんだ。
『蒼真ぁ、聞こえるぅ?』
そんな一人で混乱している俺に、甘ったるい女の呼び掛け。
勿論誰か分からない訳ではなく、単にタイミングが悪くて頭を抱えたくなっただけだ。
『あぁ、聞こえるぞ。どうしたミカエラ。何かあったか?』
俺の意識が別の場所に向いた事に気付いた隼人は、ダミアンといかに俺が魅力的かを議論し始める。
──おいおい、本人ここにいるから。
『あのねぇ、蒼真ぁ。人族が魔族の国に特攻を開始したわよぉ?』
頭の隅で突っ込もうかどうかを考え始めた矢先の、ミカエラからの飛んでもない報告だ。
ちょっと待て。え?どういう事?
人族を魔族の国へ侵攻させない為に四魔将軍達が四方に散っていた訳で。
それを何故だと俺の思考がフリーズする。
『蒼真ぁ?聞いてるぅ?』
緊張感のないミカエラの問い掛けが聞こえるが、生憎と今の俺は即決出来る冷静さを失っていた。




