2.魔王はカウンセラーではありません─7
「魔王様。彼には一度、魔法を使ってもらってはいかがですか。」
動きを確認する隼人を見守っていた俺だが、ダミアンに言われて気付いた。
それまで神力核を使って魔法を使っていた『勇者』なのである。見た感じは魔族を示しているが、能力と感覚が繋がっているかは別問題だ。
「あぁ、そうだな。隼人……何だよ、その目。」
ダミアンの言葉に素直に頷いていた俺だが、隼人に視線を向ければ何故か不満そうな顔をしている。
敵意──とは違うが、彼の視線の先はダミアンに向けられていて。
「……何でもない。何、蒼真。」
「あ、いや。魔法を……だな。以前とは使い勝手が違うかもしれないが、小さいので良いんだ。使ってみてくれないか?」
あからさまにダミアンをスルーした隼人に、俺は改めて告げてみた。
「魔法、ね。分かったよ。」
チラリとダミアンを確認した隼人だが、すぐに俺へ意識を定める。
何だか変な気分だ。三角関係?ってのは実際に経験がないが、妙に板挟みになっている感がある。
俺は小さく息を吐きつつも、次の隼人の行動に注意を向けた。最悪暴走とかになったら、俺が手を出さないといけないかもしれないから。
「魔法、魔法っと。……ん?」
「ど、どうした?」
小首を傾げた隼人に、俺は戸惑いながらも問い掛ける。
何か不都合が生じたのだろうか。
「いやぁ……。僕の魔法って何?」
『ここは何処、私は誰』的なノリの隼人の言葉に、俺は自分の顔がひきつるのを感じた。
「え……。いや、待て。一つじゃないだろ?結構色んな種類を使ってたぞ?」
「だよねぇ。でもさ、あの時はイメージだったんだよね。」
不思議そうな隼人ではあるが、彼からちゃんと魔力は感じる。
違うか。魔核を持っている魔族だから当たり前で、魔力がない=生きていないになるんだ。
「隼人。俺は基本的にイメージで魔法を使っているぞ。簡単に想像出来るのはゲームの戦闘シーンだが、魔力自体はそれに合わせて勝手に使われる感じだ。」
「そうなの?魔族って、基本的に一つの性質しか魔法を使えないんじゃなかったっけ?」
俺の説明に納得がいかなかったのか、隼人は自分の掌を開いたり閉じたりしている。
どういう事だ?
そりゃ、隼人がこっちの世界に来て教会から知識を得ているのは分かるんだ。でもそうじゃなくて、彼は『一つの性質』である事を前提に話をしている気がする。
いや、間違ってはいないんだ。彼の言う通り、基本的に魔族は一つの属性を持っているのだから。
言うなれば一つの属性しか使えない。水なら上級で氷が使える魔族も中にはいるが、あれは二属性と認識すらされているのだ。




