2.魔王はカウンセラーではありません─4
リミドラとの念話を終了した俺は、確実に俺の傍にいるであろう仲間に念話の照準を合わせる。
『ダミアン、聞こえるか?』
『魔王様っ。』
僅かに焦ったような返答のダミアンである。
先程リミドラと会話出来た事もあり、俺の中でダミアンと念話が可能であるという確信があった。それ故、それまで混乱していた自分が嘘のように立ち直っている。
『とりあえず落ち着け。俺は今、お前の前にいるな?』
勝手に自分の世界へ旅立ちそうなダミアンを制し、状況確認を促した。
恐らく、ここにいると感じている俺は精神体の可能性が高い。つまりは、肉体は未だダミアンの目の前にいる筈なのだ。
『は、はい。勿論で御座います。』
『で、声を掛けても反応しなくなった。』
『はい……。』
俺の問いに素直に応じるダミアンである。
状況的には予想通りだ。問題は脱出方法なだけで。
『分かった。お前はそのまま空間魔法を維持しておけ。俺は今、隼人の精神世界にいる。このまま内側から寝坊助を叩き起こしてやるさ。』
『まお……っ、畏まりました。』
まだ何か言いたげなダミアンに対し、指示のみを与える事にした。
あまり時間に猶予があるとは思えないし、少し強引でも隼人に起きてもらわねばならないからである。
納得してはいなさそうなダミアンだが、変態度を抜けば優秀な部下なのだ。確実に指示通りに、いやそれ以上の成果をあげてくれる筈である。
そうとくれば俺のやるべき事はただ一つだ。隼人の中にある神力核の完全掌握。しかしながら、これが一番難関な訳で。
「隼人ぉ、聞こえるか?お前、俺と魔族するんだろ?何がしたいんだ?ん~、魔族は力が全てだからなぁ。ま、俺が力を注ぐ時点でお前は文句なしに上位にはなれるがな。」
隼人の内側世界から脱け出せないままではあったが、俺はそこにいるように彼へ話し掛けた。
慎重に闇魔力を放出しながらの、隼人への介入である。
現時点で彼の意識レベルはゼロに等しいが、俺が闇魔力を広げていく中で少しずつではあるが周囲に変化が生じ始めていた。
先ずは映像の停止である。録画画面を一旦停止したかのように、俺の前に白黒ではあるが学校風景が映し出されていた。
それは俺が通った高校ではない事から、隼人の進んだ大学であろうと推測する。
俺の行けなかった未来を歩んでいた隼人。でも、彼自身はそれが白黒の世界であったのだとこの精神世界で見せられた。
「起きろよ、隼人。俺と一緒に遊ぼうぜっ。」
大声で呼び掛ける。
魔王として俺はここに存在している為、あまり派手な遊びは出来ないけどだ。向こうにはない魔法がある。想像が現実になる力があるんだ。
楽しまなくてどうするっての。