2.魔王はカウンセラーではありません─3
そして再び映像が色を失った。
映されたシーンは俺の──『逢見蒼真』としての葬儀である。
これは自分で見てもショックな映像だ。涙するクラスメイトも両親も、もはや会う事すら叶わない。
ズキッと自分の真ん中が痛くなった。『ヤバい、壊れそうだ』と遠くの方で冷静な俺の声がする。
俺は本格的に隼人の内面へ引き摺られそうになっていた。
『魔王様?』
そんな時に聞こえた自分ではない者の声は、一瞬で俺を現実へと引き戻す。
『リミドラ……か?』
『あ、はい、僕です。あ、あの……今はお忙しいですか?』
声だけ聞いても分かる自分に笑みすら浮かんだ。
しかも今の俺が置かれている状況は明らかにおかしいのに、外部と念話が通じるとかどうなんだとも思う。──まぁ、実際助かったのだが。
『あぁ。状況的には半端ないが、リミドラのおかげで精神的には余裕が出来たな。』
『えっ?そっ……あの、僕と話していても……?』
『構わないさ。何かあったのか?』
目の前ではまだ隼人の視点で映像が流れているが、俺自身はリミドラと会話をする事で自分を取り戻せた。
彼女には闇魔力で作った『黒蝶』を預けていたのでいつでも念話可能だったが、リミドラから連絡があるのは珍しい。──つまりは何か問題があったのではないかと、俺は伺うような口調になった。
『あ、いえ……。あの、喋々さんが揺らいでいたので……魔王様に何かあったのではと……その、すみませんっ。僕が心配なんて、御迷惑ですよねっ。』
自信無さそうに言紡いでいたかと思うと、突然自分を卑下し始める。
『ったく……、リミドラはそんなに俺への信用がないのか?』
『えっ?あっ!すみ……。』
『はい、ストップ。謝罪はなし、そもそも怒ってないし。ってか、正直助かったんだ。信用がないのかって聞いたのは、俺がリミドラから心配されて怒ると思われてるのが気に入らなかっただけ。悪い、少し意地悪だったな。』
俺の言葉にすぐさま謝罪しようとしたリミドラを制し、本音を打ち明けた。
彼女は獣人族って事もあって、自意識が低すぎるんだよな。
『そんな……ありがたい御言葉です……っ。僕……魔王様がい、意地悪だなんて、思ってませんから。魔王様はとってもお優しいですっ。』
拳を握って訴えかけてそうなリミドラの返答に、思わず笑みが溢れる。
和むんだよな、本当に。
『ありがとな、リミドラ。』
自然と出た感謝の言葉だった。自分を失いかけていた俺は完全復活である。
やるべき事を確実に思い出した。これはマジで戻ったら礼をする必要があるな。
変なフラグが立つとマズイから、口には出さないけどさ。