2.魔王として何をしましょう─5
両手で柄を握り締め、再度俺は踏み込む。
短距離であるが故、接地点で魔力を爆発させるようにして勢いをつけた。
「っ。」
ガキッ!
二つの刃がぶつかり、耳を突き抜ける金属音が鍛練場に響く。
その瞬間だけ、珍しくダミアンが苦痛の表情を浮かべたのが分かった。すぐにそれを消されたが。
「雷電。」
次に俺は、身体全身に稲妻を纏う。
本来ならば─人間ならば─命はないだろうが、今の俺、見た目は瞳の虹彩以外変わって見えないけど、肉体の強度は増しているようだ。
つまりは全くといって痛くも痒くもなく、全身が発光して電気を帯びている事が分かる程度。
そしてその磁力を利用し、大地から僅かに浮かぶ。自分の身体を、擬似リニアモーターカーにしたのだ。
ガン、ガッ、ギン、ガギィッ!
幾度も方向を変え、ダミアンと打ち合う。
だが、どの方向からの攻撃も刃を合わされ、攻撃が通らない。それどころか、初期位置が全く動いてないんだ。
…さすがに身体能力は敵わないか。
それならば、と俺は手にした長剣に魔力を集める。
「氷槍。」
長剣を芯とし、魔力で氷の槍を形成した。
これで、身長差から来るリーチをカバー出来るだろう。
ガン、ギンッ、ゴッ!
当てども当てども、全てダミアンに受け止められる。
魔力込みでも、俺の力じゃ敵わないって事か?
悔しさから氷の槍を握り締める。だが、それでも打開策を考える。
ダミアンは俺の攻撃を受け流す程度であって、とても手一杯には見えない。全力を出していない事は明らかだった。
悔しい。もっと力を…そうだ。力の使い方、検索。
頭の中の膨大な知識から、俺は今の自分にあった情報を取り出す。
まぁ、意識的に探そうとすると、勝手に幾つも思い浮かんでくるんだけどな。超、便利機能じゃん。
「雷電─足首まで─解除、炎装─残る全身─。」
俺は魔法をイメージする。
雷電を足首から下のみに残し、頭部を含む全身を炎の鎧で包み込んだ。
「お前の余裕、ぶち壊してやる。」
「っ?!」
ニヤリと悪い笑みを向けると、ダミアンが目を見開く。
そして炎魔法の力を借り、増強させた突きを食らわした。
ダミアンが自らの剣を盾にするが、氷の槍はそれを食い破り、彼の左肩に突き刺さる。
「っ!」
顔を歪ませ、背後へ飛ばされるダミアン。
だが翼ある彼の身体が、そのまま無様に壁へぶち当たる事はない。
バサッと大きく羽根を広げ、すんでのところで宙に留まった。