1.魔王と神力─1
「のった。」
隼人の提案に俺は悩む間もなく答える。
「それでこそ蒼真だよ。策は任せても良い?」
「あぁ。……ダミアンを使おう。」
却下される事を想定していない隼人に、俺は背中の闇魔力の翼を羽ばたかせて彼の聖剣を払った。直後、二人の間に大きな空間が出来る。
その隙をついての念話。
『ダミアン。大きくなれるか?』
『はい、魔王様。魔力を使っての疑似個体でしたら、如何様にも。』
『OK。それなら、背中に軽く俺が乗れるサイズでこっちに来い。そしたら少しここから移動したいから、隼人を背後から脚で掴みあげてくれ。あ、演出だからな。傷は付けるなよ?』
『かしこまりました。雑魚の方の拘束が完了致しましたので、すぐにそちらへ参ります。』
『あぁ。』
そんな風にダミアンとの打ち合わせが終了し、俺は隼人へニヤリと笑みを向けた。
たったそれだけで通じたのか、隼人も小さく笑う。
本当に、こうやっていると小学校の頃に悪ガキしてた頃を思い出す。色々と悪巧みしたな──子供ながらに、だけどさ。
ただ、現状の俺達の手には本物の刀剣があるって事だ。
再び魔法と互いの刃を交えていると、そう時間を置かずに巨大な影が勢い良く突っ込んでくる。勿論それはダミアンで、頭部までの大きさは二階建ての家くらいか。
まぁ、見てくれはデッカイ鳥。
そして俺の希望通りに隼人の背中を片足で掴みあげ、再び空に舞い上がった。
そして俺は難なくその背に飛び乗る。
『このような風体で宜しかったでしょうか、魔王様。』
『あぁ、最高。このまま魔王城の南に行け。あそこに大きな湖があったろ。』
既に俺は、魔王知識の中から都合の良い目的地を検索済み。
このサイズのダミアンが舞い降りても問題がなく、尚且つ隼人との戦闘に被害がもっとも少ない場所だ。
それに魔族の国の中心地に当たる為、そこまでは人族も進行してきてはいないと判断したのである。
『かしこまりました。』
ダミアンも当たり前にその場所を知っているようで、方角を告げただけで了承が返ってくる。
「隼人~。乗り心地はどうだ~?」
「あ~……、最高とは言い難いけどね。プラス何だか頭が痛くなってきた気がするんだけど、上空の空気が薄いからかなぁ。」
下を覗き込んで問い掛ければ、当たり前のように苦笑が返ってきた。
……頭痛だって?
『ダミアン。少し高度を下げてくれ。』
心配になった俺は、念話でダミアンに告げる。
しかし、返ってきた言葉は予想とは掛け離れていた
『神力が侵食してきます。』
比較的落ち着いた声音──いや、声帯を震わせて話している訳ではないのだが──で、内容は結構ヤバそうな事をダミアンが答える。
ちょっと待て。いったい何が起こっているんだ?
俺は慌てて魔力の気配を探る。
下を覗き込んで目を凝らし、隼人に集中。些細な変化も見逃さないようにだ。