6.魔王のあり方─8
「どうしてもか?考えは変わらないのか?」
何度も確認をする。
「勿論。……僕は蒼真に置いていかれたって分かった時、凄くムカついたんだよね。」
「いや、何でだよ。おかしいよね、俺だって好きで事故った訳じゃないし。」
「そんな事は問題じゃないんだ。僕を、親友を放置プレイってどんなSなの。」
「はあっ?」
既に論点がずれていた。
だいたい、自分が死ぬ時に親友を道連れって方がおかしいだろ。そもそもあの時一緒にいた訳でもないし、放置プレイとかなんだっての。
俺が混乱している間にも隼人との会話は続く。
「でね?僕は考えたんだ。蒼真のいない世界はつまらないから、どうしようかな~って。」
「いや、親友の分まで生きろよ普通に。」
「嫌。小2から一緒だったんだよ?人生の半分だよ?」
「だから何だよ。異世界に召喚されて俺の事忘れて、勇者って呼ばれて楽しんでたんだろ?」
何だかバカらしくなってきた。
俺は俺で、自分の事を忘れられてかなりショックを受けたんだからな。
「あ~、そうだね。蒼真の事を思い出せない間は、何か引っ掛かるものがありながらも比較的楽しかったかも。あ、冗談冗談。ごめんってば、蒼真。」
売り言葉に買い言葉なのは分かっているが、隼人の放った言葉は俺の中の深いところを抉った。
すぐに俺の様子に気付いて謝罪をしてくる隼人がまたムカつく。
「隼人の言い分は分かった。勇者として華々しく散って、あわよくば魔族に転職したいって事だな。」
「うん、ざっくり言えばそんな感じかな。」
説得も何も必要なく、隼人は勇者でなかった頃と何も変わらなかった。
自分に良い意味でも悪い意味でも真っ直ぐで、そのくせ少し天然。
「お前を魔族に出来なかったら、俺も一緒の墓に入ってやるよ。」
「うん、それで良いよ~。」
根本的な解決にはならないかもしれないが、軽いノリの隼人から了承をもらう。
そして俺達は再び剣を交えた。先程よりも激しくぶつかり合う刃。
互いに遠慮がなくなったというか、本気で己の力を発揮出来ている。
勇者と魔王の力の激突に耐えかねてか、空がおかしな色に変化して大地が更に震えた。
周囲の地面が削れて吹き飛んでいく。
近くにはダミアンと戦うその他三名の人族がいる筈だが、『勇者』と『魔王』の決戦に首を突っ込むバカはしないようだ。というか、次元が違い過ぎて出来ないのか。
それでも俺と隼人の剣と魔法は止まらなかった。