6.魔王のあり方─7
「何さ、良いところだったのに。」
「いや待て、おかしいだろそこんとこ。何で自死を選択してんだ、ボケ。」
思い切り突っ込んでしまったが、これは致し方無い。
何を勘違いしているのか、自分が死ねば丸く収まると思ってそうだ。
「だって僕が蒼真の命を削ってるんでしょ?」
ケロッとした隼人の言葉に、俺は脱力して座り込む。
普段周囲を見る力が非常に高く優秀な隼人だが、彼には天然という必殺アイテムがあった。
「あのな。俺は、『召喚された者の命を代償に勇者としての力を与えてられいる』と言ったんだ。何勝手に、勇者が魔王の命で強化されている事になってんだよ。それなら、討伐しなくても勇者が存在しているだけで丸儲けじゃないか。」
「あ、そっか。……って事は?」
説明には納得してくれたようだが、結論まで辿り着いてはいない。
「だから、勇者としての力を使うと隼人の寿命が削られる。」
「そうなの?僕、結構勇者してきたけど。」
「あぁ。こっち……魔族の見立てでは、既に本来の寿命の半分を使用済みだ。」
お気楽な隼人に分かりやすく言葉にすれば、キョトンと間抜けな表情を晒した。
そうだよな、ショックだよな……。
「そうなんだぁ。」
「って、おい軽いな!」
慰める体勢になっていた俺に、予想の斜め上をいく隼人の見解だった。
ずっこけそうになるのも当然だろ。
「だって、使用済みなら仕方ないよね?僕が今勇者なのは変わらないんだし、蒼真が魔王なのも事実なんだよね?」
「あ、あぁ。それはそうだ。」
「なら再度、勇者対魔王の決戦といこうよ。」
ちょっとそこまでコンビニいこう的なノリで続けられた。
待てよ?俺は懸命に隼人と戦わなくて済むように考えていたんだが、何故こうも好戦的にやっちまおうって思考に走っている?
「だからな?勇者としての力を……。」
「うん、聞いてたよ。僕が負けたら、蒼真の力で魔族にしてよ。」
「はあっ?」
何だか話が見えない展開をされているようだ。
隼人が勇者としての力を使って寿命がなくなっても彼の負け。魔王としての俺に敗北しても彼の負け。
そこを、負けたら俺の……魔王としての力で『魔族』にして?そんな事が……いや、俺は人であったのだから不可能ではないのか?
「……俺が負けたら?」
「うん、勝者報酬として僕を魔族にして。」
「いやいやいや。同じだよね、それ。全くもってシリアスじゃないよ、どんな流れだよ。」
全力で突っ込んだ。
「だって蒼真は魔族なんでしょ?」
逆に不思議そうに隼人は首を傾げる。
どうしましょ、この子。