6.魔王のあり方─2
隼人の言葉に同意を表せないものの、ダミアンが魔力を解放しつつ接近してくれば戦わざるを得ない。
戦士達三人は互いに顔を見合わせていたが、渋々武器を構え始めた。
「良いのか?」
ダミアンに圧されながら離れていく味方に対し、静かに見送る隼人に問い掛ける。
「ん?大丈夫だよ。僕は勇者として彼等と行動を共にしてるけど、目的は少し違うから。」
含みのある言葉。
何だろうか。勇者の目的と言えば、本来は人族の平和を作る事だ。
この場合、魔王討伐か魔族の討伐。国が領土を広げるのは勇者としての目的とは異なるが、それで人族に安穏が訪れるのならばそれもありなのだろう。
「このっ!何だよ、この魔族っ。」
戦士の男が切羽詰まった声をあげた。
視線を向けると、ダミアンの氷魔法で圧倒されている。戦士の強固な鎧を物ともせず、ダミアンは鋭く尖らせた槍状の氷で継ぎ目を狙って飛ばしていた。
さすがとしか言いようがないな。
魔法を放つばかりでなく、この細やかな操作は生来の素質もあるのだろう。
「私の魔法も余り効かないのっ。」
「これが魔将軍の実力かっ。」
魔法使いの女が焦ったように叫べば、吐き捨てるように聖職者の男が告げた。
「あなた方に教えて差し上げる義理はありませんが、わたくしは魔将軍ではありません。魔王様直属の魔族宰相ですよ。」
「何を言って……っ?!」
「まさか……。」
「予想外でした。」
静かに告げたダミアンの言葉に、戦士他二人が驚愕に目を見開いている。
「凄いね。僕も、あの鷲が宰相だとは思わなかったよ。よっぽどオーミの事を気に入ってるんだろうね。そういう僕も、君の事はお気に入りなんだけどね。」
俺と同じように仲間の戦いを見ていた隼人が、感慨深げに告げた。
この際、ダミアンが俺を気に入っているかどうかは関係無いと思うんだが。
「あっそ、どうでも良いさ。俺にとっての重要度はそこにはないんだ。」
「そう。僕は大切だと思うよ?それで、僕と戦いたいんでしょ?」
切り捨てるように言えば、隼人は腰に装備していた聖剣らしき豪奢な幅広の剣を引き抜く。
魔王知識からすればそれは明らかに聖剣であり、あれで斬られれば魔王としての回復力も宛には出来ないらしい代物だ。
「お前は勇者として、何を求めている。」
「僕の求めるもの?そんなの、魔王であるオーミに何の関係があるのかな。」
俺も空中に留まったままではあるが、闇魔力を使って剣を作り上げる。
こちらは日本刀のような細身の刃だが、剣道の感覚からか俺にしてみればこちらの方が使いやすいからだ。