6.魔王のあり方─1
いつものように闇魔力を翼に変換して背に装備。俺達はダミアンと共に勇者がいると思われる北西へ向かっていた。
上空からでも分かる、魔族と人族の戦闘の痕跡。
人族の遺体が転がっているばかりではなく、魔族の核もそこかしこに落ちている。あれは魔石となりうるものだから、本来ならば誰もが喜んで採取していくものなのだ。
「酷いな。」
「戦ですから仕方ありません。」
通過しながら呟く俺に、ダミアンは当たり前のように告げる。
『戦』とは、どうしてこうも無慈悲なものなのだろうな。
今の俺はこれらをどうする事も出来なかった。
◆ ◆ ◆
「やぁ、オーミ。それとも、魔王といった方が良いかな?」
笑顔で見上げてくる隼人。
既に『魔王』が誰か、『敵』が誰であるか分かっている口調である。
それもそうだな。闇魔力の翼は現時点でも出したままだし、前回も撤退する時に顕にしたのだ。
「どうして……ここに魔王がっ?!」
「嘘っ、まだ心の準備ができてないのにっ。」
「落ち着け、ジュナーにアミナ。」
勇者の連れである一行は、戦士と魔法使いと聖職者の三人のようである。
戦士はガタイの良い肌の浅黒い男で、魔法使いは黒いローブを頭から被っているから分かりにくいが金髪美女。その横にいる緑の長衣の男が、確認せずとも例の聖職者なのだろう。
本当にこれがRPGならば定番の四人編成だ。勿論、この場合の倒すべき相手は魔王である俺なのだが。
「勇者一行を出迎えに来てやった。」
内心を隠し、俺は尊大に言い放つ。
空中にホバリングしたまま、腕組みをする事で魔力の威圧感を増した。
「お出迎えありがとうだね、魔王。横にいる茶色の翼の魔族は、もしかしてこの前の鷲かな。」
それでも隼人には効果がないようで、冷静にダミアンの事を分析している。
なんかもう、気持ちで負けそうになった。
「魔王様。」
「あぁ。とりあえず、俺は勇者と一騎討ちが良いな。」
ダミアンの心配そうな呼び掛けに、俺は苦笑いで応える。
コイツだけは勇者と俺が、ただの知り合い以上の関係と知っているからな。
「かしこまりました。ではお二方の邪魔をさせないよう、わたくしはその他の雑魚を相手しておきましょう。」
作りの綺麗な顔に笑みを浮かべ、視線を『雑魚』と称した勇者以外の三人に向けた。
うん、相手の表情が思い切りひきつってる。怖いよな、こういうの──冷笑っていうんだっけ。
「そんな訳だから、君達はあの翼の魔族をお願いね。」
隼人は仲間である戦士達へにっこりと笑顔で指示を出した。
笑顔なのに妙に威圧感があるって、隼人ならではって感じがする。