5.魔王は不死身ではありません─7
「魔石確保か……。ところで、人族は何かしら要求をして来たか?」
「はい。やはり、我々魔族の土地が目的のようです。周囲四か所から、それぞれかなりの土地を求めてきています。」
魔石の生産に思考を奪われながらも、俺は根本的な問題をダミアンに問う。
しかしながら人族からの土地の要求は想定内だが、周囲四か国それぞれからとなれば話は別だ。
何せ魔族側は人族と違って個々のサイズに差がある。大きい方を例にあげるならば、数は少ないが竜族。彼等は一人あたりの必要生活範囲が、人族の何十倍もの立地が求められるのだ。
それ故、魔族の国は広いようで狭い。
「『はい、そうですか』とやる訳にもいかないんだがな。」
「勿論でございます。我々魔族としても、現時点ですらこのような狭い土地に押し込められている状態。本来ならば各自の能力を解放し、大陸全土ならず海までも魔族の所有としても良い筈なのです。」
俺の言葉に、少し違った意味で熱く同意を示すダミアンだ。
そこまで求めている訳ではないが、魔王知識によると力の弱い人族に周囲を取り囲まれている状態は魔族達のストレスであるらしい。
だが数百年に一度現れる勇者によって、毎度魔王の討伐が行われて力が削がれるのだ。しかも小規模な国境の争いを合わせれば、毎日のように起こっている。
過剰に力をつけすぎる事を忌諱されている感じか。
「新しい魔王が立った事も人族は知ってるんだろ?」
「はい。魔王様の認証の儀の後に通達を済ませております。もとより魔王様の不在を長引かせる訳には参りませんので。」
俺が魔王になってから月日が流れているとはいえ、年単位で過ぎた訳じゃないんだ。
何でこのタイミングで勇者を喚んだんだ、人族。
魔王知識にも、これ程短期間で勇者を喚ぶ事がなかったのである。
「面倒だな。やはり、勇者と直接戦うしかないのか。人族は、勇者がいるから変な希望を見出だしているんだろ?」
「現状、本来の流れとは違うのです。」
ダミアンの言葉に思わず頷く俺。
そうなのだ。通常人族は常に自分達だけ安全を確保した状態で、勇者とそれに連なる者を魔族の国に寄越す。
何故今回は戦争を仕掛けてきたのだろうか。
いつもと違う事は何だ。
……神力を使う者は何処から出てきた?
疑問点を羅列していくと、不意に過去の魔王知識にない存在に行き当たる。──神殿的なものは昔からあったが、聖職者が表立って魔族との抗争に出てきた事はなかったのだ。